第61話 剣を持つ覚悟
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リィンも団長をヤバいと判断したのか臨戦態勢に入った。それに対して団長はあくまでも自然体で拳を構えていた。
「ん?どっちも動かなくなったぞ?」
「出方を伺っていますね、ルトガーさんは兎も角リィンは彼の隙を探っています」
ラッセルは二人が動かないことに疑問を持ったが、ラウラの言う通りリィンは攻めあぐねているんだろう。迂闊に近寄れば殺される……だから近づけないんだ。
余裕の表情でリィンを見る団長、それに対して鋭い視線を向けるリィン……硬直している二人の間には重い空気が流れていた。
(この勝負、一体どうなるんだろう……リィン……)
ぐきゅるる……
「……」
「……」
「……」
「なんじゃ、フィー。お腹が鳴っとるぞ」
な、なんでこんな時にお腹がなっちゃうのかな……まあ朝早かったからご飯食べてないし少し空腹気味だったけど、今鳴らなくても……
ほら、団長もラウラもリィンすらきょとんとした顔でわたしを見ているじゃん。後ラッセルは空気読んで、滅茶苦茶恥ずかしい。
「ガァァァァッ!!」
団長の視線がわたしに向けられた隙を見逃さなかったリィン、彼は雄たけびを上げながら残像を生み出して団長に突撃していった。
「あれはロランス少尉が使っていた分け身!?」
「いや、唯の残像だね。でも数は凄い多い。見分けるのは困難かも」
分け身と違いアレには実態はない、でも数が多いので見分けるのはとても難しいだろう。でも……
「残像で誤魔化そうとしても、殺気は本体からしか出ない。要するにバレバレなんだよ」
団長は一体のリィンに接近するとその剛腕をリィンの頭に振り下ろした。
ガキンッ!!
おおよそ人の体から出るはずのない音が響いた、するとリィンは白目を向いて頭に大きなたんこぶを作って倒れてしまった。
「フィー、今人から出るはずの無いような音が聞こえたのだが……」
「ん、団長のげんこつは岩も砕いちゃうから」
「そういう問題なのか?そもそもそんなげんこつを喰らったリィンは生きているのか?」
「大丈夫だよ、昔から喰らっているけどリィンは生きてるし」
因みにわたしは喰らったことは一度もないの、喰らいたいとは思わないけど……
「団長、やりすぎじゃない?」
「そうか?リィンが全力で止めろって言っていたからついやり過ぎちまったみたいだな」
「もう……」
ガハハと豪快に笑う団長にわたしは呆れた視線しか送れなかった。
その後リィンを医務室に運んだ。ラッセルはさっき取った情報を『カペル』という導力演算器でデータを取りに向かい、団長は遅めの朝ご飯を買いに街に向かった
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