心を燃やす劫火
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った。裏切られた同士に、モンスターボールによる強制的な信頼など必要ない。仲間になる儀式は固く抱擁を交わすだけでよかった。
一分後、涼香はヒトモシを組んだ腕の上に置き立ち上がる。ヒトモシの遅さがバトルで戦力になりにくいことには変わりない。だからしばらくは、自分と一緒に動くことにするのが一番だろう。
アラームが鳴り響く中をさっきよりも足早に歩いていく。ここまでもそうだったが、残念ながらかつての涼香の手持ちはいないようだった。他のポケモンもヒトモシに生命力を吸い取られている以上、連れていくには適さない。このまま出ようとしたとき、鉄格子の割れる音がした。
中から飛び出たポケモンは、涼香の前に立ちふさがる。
「ヘルガー……」
悪魔のようにねじ曲がった立派な二つの角の両方が戦いではなく綺麗に、意図的に折られ。胸のドクロ模様も切り取られたヘルガーが、涼香とヒトモシをじっと見つめた。炎と悪の両方の性質を持つゆえに、炎とゴーストの性質を持つヒトモシの炎の効果は薄かったのか。万全ではないが、目は力を失ってはいない。
周りに散らばった本来は極めて頑丈な鉄格子は、度重ねて吹き付けた炎で大きく劣化していた。出ようと思えば、いつでも出られたのだろう。人間なら研究所の誰かが定期的に来ているはずだ。このタイミングで出てきた理由は、一つ。
「あなたも、ここから出るつもりなのね」
涼香の問いかけに、ヘルガーは頭を垂れた。檻を破れても、人間がいなくては自動ドアは抜けられない。そして研究所の人間が、一緒に抜けさせてくれるはずはない。
だからヘルガーは待っていた。自分を連れ出す、何者かの存在を。それが自分の憎む人間であると分かりながらもだ。
「いいわよ。あなたをここから出してあげる。ただし条件があるわ」
涼香は少し考え、こう口にする。地獄の道を歩む仲間に対する、制約と誓約。ヘルガーにとって傷のついた己の角と胸の模様は強さと美しさを示す勲章だが、同時にポケモンマニアからの需要も高い。飼われた後一切の戦いを許されず、養羊場の家畜のように育てられ、成長したら角と模様を刈り取られる。彼は、己の誇りを『おや』に剥奪されたのだ。
「私と一緒に、戦ってほしい。私はあなたを傷つけることはあっても誇りを奪うことはしない。戦いはあなたのしたい様にすればいい。険しい道のりになるけれど、飼い殺しはしないわ」
「ガル……」
ヘルガーは、涼香の体の周りをぐるりと一周し、最終的に涼香と同じ方向を向いた。彼なりの人間を認める儀式なのだろう。ただしそれは服従ではない。もし涼香がヘルガーのプライドを傷つけるようなことをすれば、その牙は容易に涼香に向くのは間違いない。
涼香は2体と共に、自動ドアの出口を抜ける。二体もいれば、当面旅をするには十分だ。後の仲間は、こ
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