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Blazerk Monster
心を燃やす劫火
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しいものではないが、直接埋め込むなどポケモンのことを一切考えていない狂気の沙汰だ。何をされたかが明白な分、その存在は哀れに思え。自分と同質に思えた。
話しかけると、ヒトモシはぶるっと頭の火を震わせ、ゆっくりと後ろに下がった。ただ振るえない敵意を持つ今までのポケモン達とは違っているのは明白だった。自分に対してはっきりと行動を起こしている。

「も、も……!」
「大丈夫、何もしないわ。あなたじゃ私の道にはついてこれないだろうし」
 
ヒトモシは、進化すればトップクラスの火力を持つ強力なポケモンだ。とはいえ簡単には進化しないし、ヒトモシ自身はその体の関係上、動きが非常に遅い。即戦力が必要な自分の旅には適さないと涼香は判断していた。それでもなお話しかけたのは、爛れてもトレーナーとして自分に注目しているポケモンへの警戒心と優しさか。
 なおも目を合わせ続けると、ヒトモシは頭の火を強く揺らめかせ、涼香へ炎を放ってきた。だが二人の間は耐火ガラスで遮られている。その炎が届くことはない。

 
 はずだった。


「あ、つっ……!?」

 涼香の上半身が、紫色の炎で燃え上がった。体の中が焼けつく感覚がして、考えるより先に咄嗟に地面を転がる。ポケモンの火に巻かれた時の咄嗟の行動で、トレーナーの基本だ。
 しかし、その炎は消えない。転がった後もめらめらと涼香を焼き尽くそうとする。……その状況をはっきり確認できていることに違和感を覚えた。本物の炎に焼かれているなら、熱さとショックでそんな思考の余地はないはずだ。今の涼香は、冷静すぎる。
燃え続ける自分の体を見ると、火傷もなければ服も燃えていない。でも、かといって幻の炎でもなかった。

「そういう、ことだったのね」

 ヒトモシの炎が燃やしているのは自分の身体ではなく、心だ。一年ぶりの遠出で体が疲れていても、復讐心に突き動かされるようにして動いていた涼香の足から力が抜けていく。疲労がどっと沸き、活力がなくなっていく。
周りのポケモン達が妙に元気がないのも、そういうことだ。この小さなヒトモシが、この室内のポケモン全ての生きる気力を奪っていた。臆病なのに、貪欲極まるその性質。種類とは関係なく、初めて見るポケモンだった。
手持ちのいない涼香に対処の術などない。涼香の心が燃えて、燃えて。ついにがっくりと膝をつき、うつぶせに倒れた。ヒトモシを見つめていた瞳が閉じる。

「もし……」

 それを見て安心したヒトモシは、涼香を燃やす火を消した。ヒトモシとその進化系の操る炎に、決まった温度はないし、炎タイプのそれとは性質が完全に異なる。その炎は心を燃やし、燃やしたエネルギーを自分の糧とする。完全にヒトモシ達自身の意思でコントロールされ、消したいときに消せるのだ。
普通の人間なら、誰かに起こされる
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