暁 ~小説投稿サイト~
Blazerk Monster
心を燃やす劫火
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のあるポケモンを従えるのは難しいことだ。単にポケモンが欲しいだけならもっとトレーナーに好意的なポケモンのいるところに行った方がいい。だが涼香の目的は復讐だ。本来のポケモントレーナーの道のりとはかけ離れた、日陰の道を歩くことになる。幸せに過ごすポケモンを付き合わせたくはなかった。
 それに……もしかしたら、自分の持っていたポケモンもここに送られているかもしれないという期待もあった。あの一件以来、まともな別れの挨拶も出来ず奪われた仲間たちがいれば、どれだけ心強いことか。身勝手だと知りながら、その思いは止められない。

 人体を感知する分厚い自動ドアが開き、中に入る。一本の廊下の両脇には、一体ずつ頑丈な檻や水槽に入れられている。中にいるポケモン達が、自分を睨みつけたのがはっきりわかった。人間への恨みや敵意の熱量がはっきりわかる眼差しだった。
だが涼香は臆さない。今からこの中の誰かを仲間にするのだから。何より、彼らと同じ炎が自分の胸の中には燃えているから。
涼香は檻の一つずつを、コンコンとノックしてみる。両目が潰れたゾロアークが光を失った顔を向けた。自分の殻を破りすぎたハンテールがとぐろを巻いた。布のような部分が破れ、文字通り首の皮一枚つながっただけのミミッキュが首から脅かすように手を出した。

(……何か、おかしい)

 廊下の奥のほうまで行って、違和感を覚える。全てのポケモンは涼香――人間に対する負の感情を持っていた。だがその怨みを本気でぶつけてくるポケモンがいないのだ。威嚇や警戒に留まっている。檻に入れられてこの程度なら、危険と言うほどでもない。
それに、置いてある餌も気になった。博士は全うな人格者だ。彼が餌やりを怠るとは思えない。事実時折見える餌箱は、新鮮な木の実や肉がちゃんと置かれていた。なのにポケモン達がそれをちゃんと食べている様子がないのだ。2,3口齧って、残しているのがほとんどだ。
人間を恨んでいるから食べない可能性も考えたが、それならば自分を見れば元気がなくとも死にものぐるいで食ってかかってきそうなものだ。
涼香が考えながら次の檻に進むと、視界の端で小さな灯火が揺らめいた。蝋燭のような、吹けば消えそうな幽かなものだ。涼香の視界が動く。

「もしぃ……?」

 ガラスの向こうにいるポケモン。ヒトモシは頭に紫の火が灯る白く小さな体をしていた。本来は綺麗な円柱形であろうその姿は、出来損ないのキャンドルアートのようにあちこちに体にガラス球を埋め込まれ、まるで(いぼ)に侵された病人の様だ。小さな瞳が、自分を不審の目で見つめている。

「怯えているの?」

 直感だった。涼香はしゃがみ込み、ヒトモシと目を合わせる。恐らく体のガラス玉は、前のトレーナーに埋め込まれたのだろう。ポケモンに衣服やアクセサリーをつける人間など珍
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