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『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
自動自在 念動剣
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根も止めない相手に自分の能力をベラベラしゃべる三流能力ものラノベに出てくるキャラクターじゃないからな」

 読者諸氏に説明すると、今の動きは体術。仙術や魔法の類ではない、武術としての縮地の術。軽功のひとつだ。
 仙術の縮地とは地脈を縮めて長距離をわずかな時間で移動する術である。では武術としての縮地とはなにか?
 瞬時に相手との間合いを詰めたり、相手の死角に入り込む体さばきを縮地と呼ぶ。

『手足をもって動かずに動く』

 手先や足先で動くのではなく、身体全体を駆使して動く。
 身体の全体が連動しており、特定の部位が目標に向かっているわけではないので相手はその動きを認識できず、目には消えたように映る特殊な動作のことをさす。日本の武術にも『無足之法』という、似たような概念、技術が存在するが、法眼はそれを使用したのだ。

「魔人と成ることで得られたこの念動力、自動自在の無数剣。それがこうも簡単に破られるとはな……」
「あんたの魔力は邪悪だが、剣に込められた気迫と技は本物だった。魔人なんぞになる前のあんたになら負けていたかもな」
「ふっ、たしかにこうなる前だったなら勝てたかもな」

 肘から先の無い右腕を自嘲気に見下ろす。

「そうじゃない。隻腕であっても人ならば、魔道に堕ちず邪悪な力を得ることなく修練を怠らなければの話だ」
「なんだと? 心にもないことを言うな、くだらぬ綺麗事や気休めはよせ」
「いいや、本気で言っている」
「五体満足のおまえに(ちから)を奪われ、蔑まられる者の気持ちがわかるか!」
「ああ、それはわからん。だが俺の暮らしていた故郷(くに)には障害があっても訓練や努力によって常人よりも遥かに高い身体能力や技術を身につけた達人は幾人も存在する。人を捨てて魔人(バケモノ)に成り下がったあんたは己の手で己の剣を鈍らし、汚した。己自身を弱くした」
「ずいぶんと容赦の無いことを言ってくれる」
「なんだ? 片腕を失う事となった身の上話でも聞いて、同情の言葉でもかけて欲しかったのか」
「ふふん、情けをかけてくれるというのなら今一度この片腕で勝負をさせてくれまいか」
「いいだろう」

 剣を下げ、距離をとる。

「独臂剣陣――いや、竜破墜天流のアイゼル。参る!」

 アイゼルの強靭な脚が床を蹴り、一足跳びに間合いを詰めて剛剣が思い切り降り下ろされた。
 法眼もまた床を蹴って剣を振るい、両者の位置が入れ替わった。
 法眼の肩が赤く染まり、剣を握った手に一筋の血が流れ落ちる。

「お見事。先ほどの無数の剣よりも、今の一撃のほうが遥かに重く、鋭く、激しかった」
「おぬしも、な……」

 袈裟懸けに斬られた首筋から大量の血を吹き上げたアイゼルが血溜まりの中に倒れた。

「嗚呼……まるで、悪い夢か
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