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『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
魔人襲来
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り包丁を振り回す場所じゃない」

 卓の上に剣を置くと、代わりにナイフとフォークを手に取った。

「使うなら、これだろ?」

 相手の舐めた態度に残りの男たちが怒気もあらわに抜剣して斬りかかる。
 降り下ろされる剣に下からすくい上げるようにしてナイフを走らせる、横殴りの一撃をフォークの股で止めると同時に軽くひねる。

「ギャッ!?」

 絶妙な力加減で勢いを逸らされたふたつの剣が三人目の男に突き刺さった。
 仲間に剣を走らせた男ふたりはなにが起きたのかわからず呆然とする。そのふたりの水月に法眼の爪先と踵が吸い込まれるように叩き込まれ、悶絶した。
 空手の二枚蹴りのような、おなじ足による連続蹴りだ。

「て、てめえ!」

 五人のうち四人がわずかな間で戦闘不能にされ、残ったひとりはすっかり腰が引けている。

「仲間を連れて消えろ。剣で撫でられたやつは介抱しないと痛そうだぞ」

 人様を恐喝するような破落戸にも矜持あるようで、立ち向かうか退くか俊巡していると背後から声がかけられた。

「どけい。その男、うぬらでは相手にならぬわ」
「な、なんだてめぇは!?」
「キイチ=ホーゲン。おまえに用がある」
「…………」

 顔に遮光眼鏡(バイザー)をかけ、白髪の目立つ髪を後ろでまとめた初老の男が立っていた。ずいぶんと使い込んだらしく、あちこちに傷のついた硬革鎧(ハードレザーアーマー)を着ている姿は歴戦の傭兵や魔物ハンターのようだが、いささか目立つ姿をしていた。
 右の肩から四本、左の肩から四本。合わせて八本の剣の鞘が突き出ている。つまり八本もの剣を背負っているのだ。さらに左右の腰に一本ずつ剣を帯びている。
 そして、右肘から先がない。
 隻腕にも関わらず、一〇本もの剣を身に帯びているのだ。
 これほどの数の剣を一本の腕でいかにして振るうのか? 彼の姿を見た者は一様にそのような疑問を抱くことだろう。

「うるせーぞ片手野郎、×××は引っ込んでろ!」

 身体に障害のある人を罵る差別的な言葉を発した男は、その言葉を発した咎をすぐに我が身で受けることとなった。
 遮光眼鏡(バイザー)の男の背負っていた剣が突如として抜き放たれ、男の右腕を刎ねたのだ。

「な……!?」

 腕はすぐ近くの卓上にあった麦酒の杯の中に落ち、赤い泡を溢れされる。

「おまえは今、片手と言ったな? それはおまえのことか? ああ? おまえ自身のことなのか? ああッ!」

 さらにもう一本の剣が先程のように持ち手もおらずにひとりでに抜かれ、返答も待たずに肘から先を失い、おびただしい量の血を流す男の首を切り落とした。

「キャー!」

 乱闘どころではない。酒場にいた者の半分が突然の刃傷沙汰にその場から逃げ出した。
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