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『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
邂逅
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……貴族たるもの力無き民を守らなくてはならない」
「十歳の誕生日、はじめて剣を握った時にかけられた言葉は」
「……力無き正義は無力であり、正義なき力は暴力だ」
「アールスハイド魔法学院に入学し、魔法を学ぶことが決まった時はなんて言われた」
「……大いなる力には大いなる責任がともなう」
「少しは目が覚めたか」
「ああ……、俺はなんて、なんてことを言って、とんでもないことをしていたんだ……」
「この感触、おまえには本格的な霊的治療が必要だな」

 耳をつんざく警告音が鳴り響いた。

『緊急事態発生、緊急事態発生。係員の誘導に従い、ただちに避難してください。繰り返します。緊急事態発生、緊急事態発生――』

「いったいなんだ!?」

 緊急事態を示す赤字の文章が操作盤に表示された。
 研究所内にある魔方陣が高濃度の魔力を放出している。このまま放出が止まらなければ、付近の動植物は魔物と化してしまうだろう。もちろん、人も。

「いったいどうして!?」
「どうも俺が呼び出された門が呼び水になっちまったようだな。ひとつの火山の噴火が他の火山の噴火を誘発するように、あちこちに門が開いているようだ。おい、おまえなら魔方陣の操作ができるだろ。閉じろ」
「今やってる!」

 魔方陣が輝き、悪臭と異音と共に異形の獣が姿を現しつつある。

「くそっ、間に合わない!」

「伯爵家のご子息様がそんな下品な言葉を使うなよ。らしくないぞ」
「あんた、どうしてそんなに落ち着いていられるんだよ!? バケモノが出てくるんだぞ!」
「どうして? 格下の妖怪相手に臆する必要なんてないからさ」
「格下……、だと? こんな強い魔力なのに……」
「こいつは俺が修祓するから、おまえは門を閉じることに集中しろ」

 ひときわ激しい轟音と共に閃光が迸り、それが姿を現した。
 赤褐色の剛毛に覆われた四足獣の巨躯からは六本の腕と蛇のように長い首が七本も伸びている。先端には人とも獣ともつかない獰猛な顔があり、炯々たる眼光を輝かせていた。

「フォービ!」

 火炎魔獣フォービ。地方によっては神として崇められ、畏怖され、祀られることもある強力な魔獣。七つの首から吐き出す炎は激しく、人など一瞬で黒焦げにしてしまうという。
 一流の魔法使いのサポートを受けた魔物ハンターの一団がようやく討伐できるレベルの危険な存在。
 カートが戯れに生み出していたネズミの魔獣などとは比べ物にならない脅威だ。
 七つの口が開き、火の息吹(ファイアーブレス)が吐き出され、室内が紅蓮に染まる。

「タニヤタ・ウダカダイバナ・エンケイエンケイ・ソワカ!」

 法眼の手が龍策印を結印し水天の真言を唱えると、彼とカートの周囲に水の障壁が張り巡らされた。
 高熱の火炎
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