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『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
遥かなる異境『日本』
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でも連絡してきてください」

 こうして巷の陰陽師、鬼一法眼の一日が終わった。



 翌朝。
 ジョギングで山下公園からみなとみらいを周回した法眼がストレッチに移る。
 肉体のあちこちをほぐし、のばす。
 股割りの格好で上体を地面にのばし、くっつけた後、腕立て伏せに移行する。
 ただの腕立てではない。拳立てだ。拳を握り、一指と二指の拳頭部分を地にあてて腕立て伏せをする。
 それを五十回ほどおこなった後、五十一回目からは拳頭ではなく十本の指で体重をささえる。指立て伏せだ。それを十回すませると、左右の小指が上がった。八本の指でまた十回。
 十回ごとに小指から順に指の数が減ってゆく。
 最後の十回は親指だけ。
 全部で一〇〇回。
 それを一セットとして、二セットおこなった。

(最近は仕事仕事でこの手の鍛錬をおこたっていたが、思ったよりなまってないな)

 さすがに汗ばんでいる。が、息は乱れていない。
 呼吸の乱れは気を散らし、術の完成を妨げる。ただしい呼吸法は呪術師にとって基礎の基礎といえる。
 そのまま起き上がると、両手で円を描きつつ、片足を上げ、前に出し、下す。
 もう片方の足を上げ、前に出し、下す。また片方の足を上げ、前に出し、下す・・・・・・。
 それらの動作を極めてゆっくりと、だが寸分たがわぬ精確さでくり返す。
 太極拳の套路(とうろ)や道教の禹歩(うほ)に似ている。だがあきらかに異なる独特の動きだ。
 額に汗がにじむ。
 見た目こそ地味だが先ほどの腕立て伏せよりも激しく全身の筋肉を酷使しているからだ。
 筋骨を鍛えて身体を外面から強くして剛力を用いる武術を外家拳と呼び、太極拳のように呼吸や 内面を鍛えて柔軟な力を用いる武術を内家拳と呼ぶ。
 最初の腕立て伏せのような筋力トレーニングが外家拳の修行なら、これはまさに内家拳の修行になる。
 武術はもっとも実践的な魔術であり、五行拳や形意拳、八卦掌など。その起源に魔術的なものがある流派は多い。
 法眼流などはまさに武術と魔術のハイブリッドであった。
 全身に気が廻らされるのを確認した後、型に移行する。
 算数の九九や歴史の年号を丸暗記する「だけ」の勉強が役に立たないのと一緒で、型の修行はただ形をなぞるだけでは無意味だ。
 つねに実戦を想定して動かなければならない。
 型には意味がある。
 型の動きというのは身体の運用理論であり、実戦に対応するための動きを作り上げるために必要なものなのだ。
 武道の型にはすり足をもちいた独特の重心移動や軸の固定など、日常的な動きから離れた身体運用を要求してくる部分が多い。
 これらの動きを身につけるのはとても困難ではあるが、型の要求通りに正しく動くことができれば動きの質が変化する。
 肉体ではなく神
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