暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン10 熱血!青春!大暴走!
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アドレイションを攻撃表示とし、クノスぺでライフを限界まで削る……そうすれば、師匠は先ほどドローしたベイルを出す。まず、これが最初の賭けでした」

 それを聞いた2人の男が、同時にアルティメットレーナーの横に並び立つベイルへと目を向ける。そんな視線の動きと合わせるかのように、少女の声が続いた。

「そして2つ目は師匠がそのベイルをこうして、守備表示で特殊召喚するということ。私もこれは知っていましたが、エクシーズ・ソウルは全体強化のカード。つまり攻撃力が0のベイルであっても、ランク8のジャイアントレーナーを選択すればその数値は2700まで上昇する。それを狙う可能性も捨てきれませんでしたから、どちらかといえばこちらの方が分の悪い賭けでした」

 それは、どこかひとつが崩れればあっさりと瓦解する、一見すればごく小さな希望。それでもライフが追い込まれればベイルが回復のために出てくる、そして攻撃力0のベイルはいくら強化カードがあったとしても守備表示で呼び出される……それはすべて、きわめて合理的な戦術。だからこそ、少女はその目が出ることを信じた。
 ゆっくりと、少女が笑う。その微笑みに2人の様子を観戦していた朝顔は、ふとかつての同僚がよく見せた姿を思い出す。

「……ふん。巻の字直伝のポーカーフェイスか。通るわけない希望をなぜか予定調和のごとく押し通す、あれもそういう奴だった」

 その言葉通り、堂々たる態度でのハッタリを少女に教え込んだのは糸巻本人である。相手にこちらの自信を嘘でもいいから伝えることで勝手に深読みさせ、その思考をドツボにはまらせることでこちらの狙い通りの結果へと暗に誘導する。まさに彼女の得意としていた盤外戦術を、この1か月で少女の柔軟な脳と純粋な頭は乾いたスポンジが水を吸い取るかの如く吸収していた。
 もっとも、少女にとってもこの戦法を実践に使うのは初めてのことである。本人の気質からはかけ離れたこのような盤外戦術を、しかもぶっつけ本番で成し得たのはまさしく七宝寺が見出し、糸巻が感じた少女自身の持つ天性のセンスの賜物か。

「ありがとうございます、お姉様。お姉様のおかげで、またひとつ私は成長することができました。では師匠、参ります!」
「なにがなんだかわからんが、ああ来い!言っただろう、俺は逃げも隠れもせん!」

 その声に背中を押されるように、少女が1枚のカードを表に返す。それはピンポイント・ガードと共に1ターン目からずっと伏せられ、しかし使う機会のこれまで訪れなかったカード。満を持して、その力が牙をむく。

「トラップ発動、メテオ・レイン!このカードの効果によりこのターン、私の全てのモンスターは守備モンスターに対する貫通能力を得ます!」
「なるほど、それでベイルを叩くつもりか?だがアドレイションの攻撃力は2800
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