第六章
[8]前話
「是非贈る」
「それだけ奥方様を愛されているのですね」
「そうなのですね」
「そうだ、年齢は関係ない」
ナポレオン自身にとってはだ。
「だからだ」
「あの花を贈られて」
「奥方様に喜んで頂きますか」
「是非な。若しジョゼフィーヌがいなくなれば」
ふとだ、ナポレオンは感じ取って述べた。
「私は駄目になるかも知れない」
「まさか」
「その様なことは」
「彼女は私の幸運の女神だ」
こうも言うのだった。
「彼女に出会ってから私はその時まで以上に素晴らしい道を歩いているのだからな」
「それで、ですか」
「そう言われますか」
「そうだ、ジョゼフィーヌがいてだ」
それでというのだ。92
「私は道が開けているのだからな」
「だからですか」
「若し奥方様がおられなくなれば」
「その時は」
「そんな気もする」
こうも言ってだ、ナポレオンは菫の花を観るのだった。妻が心から愛しているその花は彼にとっては愛そのものだった。
それでだ、こうも言ったのだった。
「公では私達の年齢は違わないしな」
「半年位ですね」
「奥方様がそれ位先なだけですね」
「そうだ、まさかお互いに年齢をサバ読みするとはな」
このことについては笑って話した。
「思わなかったが」
「結果としてそうなった」
「左様ですね」
「そうだ、ならそれでいいな」
書類でそうなっているのならというのだ。
「私はジョゼフィーヌに相応しい」
「だからですね」
「これからも」
「妻を愛していく」
ナポレオンは確かな声で言った、そうして彼は終生ジョゼフィーヌを愛した。後に子が生まれないことから離婚したのは歴史にあるが死ぬその時に彼女の名を呟いたことも歴史にある、結婚証明書の件はその二人の一幕である。少しでも多くの人が知ってくれれば幸いである。
年齢詐称 完
2019・1・14
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