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年齢詐称
第二章

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「そのうえで君に私が直接手渡そう」
「宜しくお願いします」
「すぐにボアルネ将軍の剣を探すのだ」
 ナポレオンは命じた、こうしてだった。
 剣はすぐに見付かりナポレオンは約束通り自らウージューヌに彼の父の形見の剣を手渡して言った。
「大事にすることだ」
「はい、必ず」
「君の父上は立派だった」
「ですが」
「君の様な息子を育てたのだ」
 そこからわかるというのだ。
「だからだ」
「父を立派だと言ってくれますか」
「立派な子は立派な親が育てるものだ」
 こう言うのだった。
「だからだ」
「父をそう言って下さいますか」
「そうだ、そして君もだ」
「これからはですね」
「その父上の様にだ」
 まさにというのだ。
「立派に育つことだ」
「わかりました」
「では君の家まで帰るのだ」
 少年に強い声で言った、この時でだった。
 ナポレオンは話が終わったと思った、だが次の日だった。
 また来客が来た、今度の来客は。
「貴婦人か」
「はい、何でもです」 
 報告をする士官がナポレオンに話す。
「昨日の少年の母君だとか」
「では将軍の未亡人か」
「そうなりますね」
「ではそれなりの立場の方だな」
 ナポレオンはすぐにこう考えた。
「そうだな」
「整った服にお顔立ちの方です」
「そうか、では然るべき場所にお通ししてだ」
「そして、ですね」
「また会おう」
「それでは」
 こうしてだ、ナポレオンはその貴婦人を応接間に案内させてそうしてだった。その貴婦人と会った。
 そうしてその貴婦人と会うと。
 黒い縮れた髪の毛と髪の毛と同じ瞳の艶のある貴婦人だった、その匂い立つ様な美貌にナポレオンは目を奪われた、そしてだった。
 その彼女はこう名乗った。
「ジョゼフィーヌと申します」
「ボアルネ将軍夫人ですね」
「かつては」
 ジョゼフィーヌはナポレオンの今の言葉に悲しい顔で応えた。
「そうでした」
「失礼、失言でした」
「いえ、お気になさらずに」
「そう言って頂けますか」
「はい、それでこの度お邪魔したのは」
「何故でしょうか」
「昨日の息子へのことです」
 ジョゼフィーヌはナポレオンの視線を感じつつ彼に話した。
「お心遣い有り難うございます」
「当然のことをしたまでです」
 ナポレオンはジョゼフィーヌに確かな声で答えた。
「ですから」
「このことはですか」
「私も言わせて頂きます」
「お気になさらずにとですか」
「私はご子息の立派さに応えたまでです」
 自ら父の遺品、そして誇りを受け取りに来た立派さにというのだ。
「それだけです」
「そうなのですか」
「はい、ですから」
 それでというのだ。
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