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花の妖精
第六章

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「私の」
「つまりお家までね」
「はい、デートしましょう」 
 こういうのだった。
「そこまで」
「それじゃあね」
「それとですが」
「それと?」
「ちょっと何か食べに行きません?」
 若菜は雄二にまた提案した。
「今から」
「ううん、何かね」
「軽く」
「それじゃあたこ焼きかな」
 軽くと言われてだ、雄二は大阪名物のこの食べものを出した。
「それかな」
「あっ、たこ焼きですか」
「うん、それでどうかな」
「いいですね」 
 たこ焼きと言われてだ、若菜は雄二に笑顔で答えた。
「それじゃあ」
「二人でたこ焼き食べて」
「それで、ですね」
「お家まで送るよ」
 若菜のそこまでというのだ。
「そうさせてもらうよ」
「わかりました、それじゃあ」
「そして若菜ちゃんが卒業したら」
「その日からですね」
「一緒に住もうね」
「お部屋も決まってますし」
 もうそこまで決まっているのだ、二人の間柄は。
「それじゃあそれまでチューリップはお互い育てて」
「そしてね」
「そのうえで、ですね」
「一緒に住む様になったら」
「窓辺に置いて」
 チューリップの球根を入れた鉢をというのだ。
「お水やって肥料もやって」
「チューリップってすぐに咲くしね」
「実は強いですから」
「簡単に咲いてね」
「奇麗ですよ」
 咲いたその花はというのだ。
「とても」
「そのことも楽しみですよね」
「本当にね。それじゃあ」
「今日はたこ焼き食べて」
「私のお家まで」
「一緒に」
 雄二は若菜に笑顔で応えた、そしてだった。
 二人で手をつないで帰路についた、その手にはそれぞれの球根があった。妖精に勧められたそれは二人が同棲する様になってすぐに花を咲かせた。そうして二人は毎年春には窓辺にチューリップを飾った。赤と白の。そして子供が出来ると今度は黄色いものも飾った。幸せがそこにあると思ったからこそ。


花の妖精   完


               2019・5・30
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