口入れ屋式の交渉術
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」
「は、はい」
そう言うとニナは自分の髪を纏めていた髪飾りを外し、テーブルの上に置いた。
「これは……?」
「見ての通り、髪を纏めて留めておける髪飾りですよ。端切れと紐で出来ています」
「ほほう。手に取ってみても?」
「は、はい!どうぞ……」
エリオットはそう言うと、ニナの髪飾りを手に取り、真剣な表情で観察する。やがて観察が終わったのか、髪飾りをテーブルに戻したエリオットは、
「カミル!部屋まで来なさい!」
と声を張り上げた。ドタドタと騒がしい足音が廊下から聞こえたかと思うと、明るいブラウンの髪の青年が部屋に息を切らして入ってきた。
「カミル、此方は今日から新しく雇う事になった針子のニナさんだ。ご挨拶しなさい」
エリオットにそう促されたが、カミル青年はピクリともしない。ニナの顔を見つめたまま固まっている。心なしか、息を切らしていた先程よりも顔が赤い。
「カミル!」
「え?あ、あ……えぇと、カ、カミル!カミルと言います!どうぞよろしく」
「……ニナさん、挨拶を返しなさい」
「あ、は、はい!ニナと申します。こちらこそよろしく」
「カミル、私はシュートさんと契約の内容について詰めるからニナさんを案内してあげなさい」
「は、はい。ニナさん、こちらへどうぞ」
「はい、よろしくお願いしましゅ……」
2人は連れ立って会長の執務室から出ていく。
「いやはや、シュート様のご慧眼には毎度の事驚かされる」
「いやいや、偶然の拾い物でして。ですがかなりの掘り出し物と自負しています」
にこやかに言葉を交わすエリオットとシュート。
「技能(スキル)は所詮技術の補佐しかしてくれませんからな。デザインや創造性等の部分はどうしても、個人の才能の部分が大きい」
そう、シュートが目をつけたのもその部分だった。技能とはその名の通り、その技能の名称になっている作業をやり易く、効率的に、かつ技能を持たない人よりも上手く出来るようになる技術のブーストの様な物だ。※ただし、鑑定スキルのような先天的な物を除く
「ニナさんには新しい物を作る才能があった……それも、貧しい農民の生活の中で限りある物でもアレほど上品な洒落物を」
ニナの付けていたシュシュの様な髪飾りは、シュートが『此方の世界へ来てから』見た事の無い物だった。その上端切れを縫い合わせて作られた小さな薔薇の様な花。あれもこの世界では見たことの無い飾りだった。その新しい物を作り出せるセンスを買って、シュートはエリオットの商会に売り込みをかけたのだ。
「それに、カミル君も気に入ったようですしね」
シュートがニヤリと笑うと、
「いやはや、腹芸の出来ない息子でお恥ずかし
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