口入れ屋式の交渉術
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ていた。エリオットは席を薦め、控えていた女中にお茶の用意をさせる。そしてシュートとニナが隣り合ってソファに腰掛け、向かい合う形でエリオットが座る。
「して、シュート殿。先程の言葉は一体……?」
「言葉通りの意味ですよ。『未来の商会長婦人を見つけて来た』と」
「すると、此方のお嬢さんが……?」
エリオットはニナに視線を向ける。その値踏みをするような視線は先程までの人当たりのいい優しげな眼差しとは全くの別物で、商品の品定めをする遣り手の商人のそれだった。
「お嬢さん、お名前は?」
「は、はい!ニナと申します」
「歳は?」
「じゅ、17です」
「ふむ……シュート殿。アレを見せて頂けますかな?」
「ええ、勿論。こちらになります」
シュートは懐から丸めた紙を取り出し、エリオットに手渡した。それはニナをシュートが鑑定した結果の書かれた紙であり、ニナの能力を丸裸にした物と言っても過言ではない代物である。
「ふむ……成る程。確かに我が商会にはうってつけの人材の様だ」
その紙を見て、エリオットは納得したように頷く。その姿を見てニナはある疑問が浮かぶ。
「あの……少し宜しいでしょうか?」
「何かね?ニナさん」
「あの……その紙に書かれた事を疑わないのですか?私の能力を記したそれが偽物とは」
それを聞いたエリオットはキョトンとした顔をした後、肩を揺らしてクックッと笑い始めた。可笑しくて堪らない、といった様子だ。
「いやいや、成る程成る程!これは素晴らしい掘り出し物かも知れませんなシュート殿!」
「でしょう?私も初めて見た時からピンと来たのですよ」
ニナには何が何だか解らない。頭の整理も理解も追い付いていないのだ。
「失敬失敬。ニナさん、貴女はとても聡明な人の様だ」
「いえ!聡明だなんて、そんな……」
「いやいや、目の付け所が素晴らしい。実はこの紙は特殊な魔法が練り込まれた紙でね。嘘の情報などを書く事が出来ない様になっているのだよ」
そんな物があるなどと、ニナは知らなかった。
「普段は商人同士の商談などの契約の締結の際等に使われる物なのだが……シュート殿は自分の抱える『商品』の情報を書くのに惜しみ無く使われる」
勿論、シュート殿が嘘の情報を書くとは私は思っておりませんがね?とエリオットは付け加えた。
「言ったでしょう?私の商売に最も必要なのは『信用』。それを疎かにすればこの商売はその瞬間に瓦解するのですよ」
「しかし……これだけでは優秀な針子であり経営の素質も有りそうな女性、というだけでしょう?商会長婦人とはとてもとても」
「まさか。私がそんなつまらない理由で彼女を推薦するとでも?ニナさん、あれを
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