ありふれた職業で世界堪能
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出来るだけ避けねばならないな。
「移動する。他にも近づいて来ている」
それから移動と迎撃と逃走を繰り返し、一日で拠点に引き返す羽目になった。主と思われる熊によって右腕を大きく裂かれた。幸い、白崎の魔法で傷跡が残る程度にまで治ったのが豆と種もほぼ使い切ってしまった。拠点へ戻り、半日の休息を取って丸一日の捜索に切り替え、1週間の時が流れた。
儂達の間にハジメは死んだという思いを無視するのが限界に近づいた頃、拠点の方から叫び声が聞こえた。急いで戻ったそこには、二股狼の死体の前で苦しんでいるハジメが居た。
「白崎!!安全を確保する!!」
「分かった!!」
倒れているハジメを白崎が担ぎ上げ拠点への道に飛び込む。儂は拠点以外の道に対して豆を投げる。同時に鍬に白崎の言う魔力を込めて地面につきたてる。
「育て、大地の豆!!」
同時に投げた豆が魔力を糧に急成長を起こす。一瞬にして通路を埋め尽くす程の蔓となって害獣を寄せ付けない。まあ、栄養が足りないために1日しか持たない欠点もあるが問題はない。安全を確認してから拠点へと走る。
「白崎、ハジメは!!」
「あっ、七夜君、大丈夫、ハジメ君、生きてる。生きてるよ」
白崎に膝枕をされながら目を瞑って苦しそうにしているが、苦しそうにしているということは生きているということだ。しばらく待った所でハジメが目を開ける。
「……夢か?」
「夢じゃないよ。助けに、来たよ」
「見捨てるぐらいなら、最初から友だとは思わんよ。五体満足とは言えないみたいだが、生きていてくれて良かったよ、ハジメ」
「徹、なのか?どうやって」
「それは落ち着いてからにしようや。正直、儂らも限界だ。お前も休め。こいつを食え」
行軍食として開発した豆をハジメに投げる。
「これは?」
「仙豆(劣)だ」
「仙豆!?仙豆ってあの仙豆!?」
「仙豆(劣)だと言っただろうが。腹が膨れるだけで回復効果はない。まあ、出すものがないから探索には役に立った」
用を足している際に襲われて死亡なんて嫌な死に方だ。
「飯も水も燃料も幾らでもある。丸一日は安全でもある。精神的に休まる暇なんて無かったんだろう。睡眠薬もある。使うか?」
「いい。それよりも、手を握ってくれないか」
食いちぎられたのか、無くなっている左腕を見ないようにして右手を握り、白崎にも一緒に握らせる。
「……温かい。ぐすっ、誰かの手ってこんなに温かかったんだな」
涙を流しながら意識を失う様にハジメが眠りに落ちた。
「さて、自分のベッドに引きずり込むんじゃないぞ、白崎」
「ししし、しないよ、そんなこと!!」
「はいはい、とりあえずオレの方のテントのベッドに放り込め
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