第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十二 〜襲撃〜
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うたんやろ? 年上を呼び捨てにするんは抵抗ある、せやから。……それとも、あかんか?」
何故、いじけたような仕草をするのか。
ここではっきりと拒否を示したなら、どう見ても私が苛めている格好になるのだが。
「……好きにすれば良かろう」
「さっすが、歳っち。話がわかるなぁ♪」
嬉しげに、腕を絡ませてくる霞。
「これ。少しばかり、はしたないのではないか?」
「ウチは気にせえへんで?」
私は気になるのだが、な。
……どうやら、不毛な議論にしかならぬようだ。
「ところで、何か話があったのではないのか?」
「ああ、せやった。……アイツら、ホンマに全員、并州まで連れて帰る気なんか?」
「うむ。それは、既に話してある通りだ」
「……歳っちの考えも、わからんでもない。元賊徒やから、目の届くようにしたいちゅうんはな。けどな」
霞の眼は、真剣そのものだ。
「ウチらの軍と変わらん規模の連中を引き連れていく。それが、どんだけ無茶かわからん、アンタやないやろ?」
「無論だ」
「せやったら、今からでもまだ間に合うやろ。他の手立て、考えた方がええんちゃうか?」
「ならば尋ねるが。霞は、何か良き案でもあるのか?」
「そ、それは……ある訳ないやろ。ウチは、詠達や歳っちみたいに、頭良うないねんで?」
気まずそうだが、霞はそこまで卑下する事もない筈だ。
何せ、あの張文遠その人なのだからな。
「稟や風やったら、ええ知恵浮かぶん違うか?」
「かも知れぬが。だが、二人はその策を巡らせる事はあるまい」
「何でや?」
「私が、降伏した者達を連れて行く、と宣言した時。二人とも、異論がなかった」
「それは、歳っちに惚れとるから。アンタの意に沿わん事は言わへんだけちゃうか?」
「霞、それは違うな。私を慕ってくれていればこそ、二人は私に憚りなどせぬ。私が誤っていると思えば、即座に指摘するよう、そう申しつけてある」
「……ほなら、稟も風も、これでええ、って思ってるっちゅうんやな?」
「恐らくな。そして、稟と風が止めぬのに、私が過ちを犯せば、今度は星と愛紗が黙っていまい。勿論、鈴々もだ」
「随分と、皆を信用しとるんやな」
「当然であろう? 部下を信じぬ者が、人の上に立つ資格などあろう筈がない。だからこそ、私は己を律する事が出来るのだ」
「……せやな。アンタは、そういう男や」
何故か、遠い目をする霞であった。
出立の刻。
「歳三様。脱落した者、数名のみ、との事です」
「それどころかですねー。お兄さん、これを」
と、風が何かを差し出した。
「……黄巾ではないか」
しかも、剣で斬りつけた跡がある。
「皆、今までの自分と決別し、ご主人様に従う決意の表れ
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