第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十二 〜襲撃〜
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。
愛紗の香りを感じながら、ふとそう思った。
朝方、と言っても空が白み始めた頃。
……ふと、妙な気配を感じ、目覚めた。
「ご主人様。起きておられますか?」
「愛紗。……お前も、気づいたか」
「はい。参りましょう、ただ事ではなさそうです」
「よし」
愛紗は跳ね起きると、素早く美しい裸体を衣に包んでいく。
「刻が惜しい。これを使え」
私は、兼定を差し出した。
「し、しかしこれは、ご主人様の愛剣では」
「構わぬ。私には、これがある」
堀川国広。
脇差ではあるが、紛れもなく、私の愛刀。
「参るぞ」
「はい!」
天幕を出て、あたりを見渡す。
「彼処のようだな」
「ええ。あ、ご主人様。人影が」
「……よし。何者か、確かめてくれよう」
陣の一角へ、二人で駆け寄った。
そこは、糧秣の保管場所。
「おい、急げよ!」
「わかってるって。これだけありゃ、当分困らないだろうぜ」
相手は五、六人というところか。
私と愛紗であれば、心配は無用だろうが。
「ご主人様。賊、でしょうか?」
「確かに賊だろう。……だが、あれを見ろ」
「……あれは……何という事だっ!」
愛紗が、歯がみをする。
賊達の腕に巻かれたもの。
それは、少し前まで彼らが、頭に巻いていたそれである。
降伏した黄巾党の者で、我が軍に加わる事を望んだ者には、目印として黄巾を、左腕に巻くようにさせていた。
「どうやら、逃亡を図ったようだな。その行きがけの駄賃に、糧秣を掠めていく……そんなところか」
「ご主人様の恩を仇で返すとは……。許さぬ!」
「待て、愛紗。奴らの動きが、妙だ」
私は、愛紗の肩に手を置き、押し止めた。
糧秣を盗み出した者共は、そのまま陣を抜け出す、とばかり思っていたのだが。
……どうやら、私の天幕に用があるらしい。
「しかし、大丈夫か?」
「なあに、女とよろしくやっているような腑抜けさ。寝込みを襲えばイチコロよ」
「そうだ。俺達をこき使うだけで、てめぇでは何もできねぇ、ただの優男。それでも首を持っていきゃ、大手柄だぜ?」
ふふ、腑抜けか。
私も、酷く見くびられたものだ。
「ご主人様。……宜しいですね?」
どうやら、本気で怒っているらしい。
だが、己の事のみ考えるような輩、確かに手加減は無用。
「うむ。あのような者共、一人とて生かすに及ばず」
「御意!」
まさに、私の天幕に襲いかかろうとする輩に、
「待て! 外道共!」
愛紗の一喝が、全員を凍り付かせた。
「げ? か、関羽?」
「土方の情婦が、何故ここに?」
賊の一人の言葉に、愛紗の
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