第二章 十三年の孤独
第41話 戦果報告
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日傘の先端が床にぶつかり、軽快な音が通路に響く。
先程怒られたばかりだと言うのに、こんな態度を取っていたらまた叱られてしまうだろうか。
――ま、後悔してないから良いけど
そんな事を考えながら、一人長い廊下を歩いて行く。
ふと前方から足音が聞こえ、スキアは歩みを止めた。
閉じていた瞳を開き、音の正体を確かめようと目を凝らす。
そうして見えた音の主に、スキアは薄い笑みを浮かべると静かに言葉を発した。
「ご機嫌よう。カオス様」
色の無いこの世界には珍しい、赤髪の男にそう言葉をかけるスキア。
男――カオスは微笑みを浮かべるスキアに気付くと、普段のような軽薄そうな笑みを浮かべ話し始める。
「やあ、スキア。門番である君がこんな所にいるだなんて、珍しいね」
赤色の髪をなびかせ、カオスは言う。
前回の天馬達との試合で受けた色によるダメージもどうやら回復したらしく、いつもの尊大な口調が自然と際立って聞こえる。
「君のチームメイトから聞いたよ。あの人間達に負けたみたいだね」
恐らく、マッドネスあたりに聞いたのだろう。
クロトに報告に行く際、「勝手な行動したお前だけで行け」とかなり立腹していた事をスキアは思い出す。
「もう知られていましたか。いやはや本当、情けない限りです」
実際の所、試合には勝っていたが、目的である裏切り者の捕縛を成せなかったのだから負けと同じだ。
肩をすくめ、スキアは残念そうに囁いた。
「……君は、嘘吐きだな」
「…………何がです?」
先程までの軽薄な笑みを消し、カオスは言葉を紡ぐ。
「窓を見てみると良い。『情けない』と言うわりには、ずいぶん楽しそうな顔をしているから」
そう言われ、ちらりと窓の方を見る。
窓にぼんやりと映る黒い自身の顔は、確かに楽しそうな笑みを浮かべていて、スキアは「フフッ」と笑いを零す。
能天気に笑みを零したスキアに、カオスは不快そうに眉間にシワを寄せ、「悔しくないのか」と言葉を投げかけた。
「そうですねぇ。クロト様には悪いですが、今回の件で個性的な方に出会う事が出来たので……私としては、喜楽の気持ちの方が強いですか」
「…………松風天馬の事か」
スキアが静かに頷く。
同時に、カオスの顔色が変わった。
「あの方は絶対絶命な状況で私の力を自力で振り払うと言う偉業をなさった。……興味を持って当然でしょう」
目を見開き、嬉々とした表情で語るスキア。
その顔を一瞥すると、カオスは不機嫌そうに顔を背けた。
「……僕は、嫌いだ。ああ言う奴……」
そう囁き、黒く染まった壁を見詰めるその瞳は。
鮮やかな黄緑色とは反対に、どこか恨みのような、憎しみに似た感情が混じっ
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