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色を無くしたこの世界で
第二章 十三年の孤独
第37話 おかしな皆
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ステリはしばらく考え込んだ後、首を横に振り「難しい話になるから、今は止めておく」と唱えた。
 ただでさえ混乱している彼等に説明した所で更なる混乱を生む事になるだけだろう。
 天馬達もそれを理解したのか、それ以上その事を追求する者はいなかった。

「ねぇ、アステリ。どうすれば皆を元に戻せるの……?」
「スキアを倒して、影の支配を解いてもらうしかない。でも、スキアが素直に従うとは思えないな……」
「そんな……」

 アステリの言葉に悲しそうに俯いた天馬に、今まで黙っていた円堂が口を開く。

「天馬、いつまで落ち込んでいるんだ!」
「円堂監督……」
「奪われたなら奪い返せば良い。俺達はそうやっていつも大切な物を守ってきただろ!」
「!」

 円堂の言葉に天馬は目を見開いた。

「そうだよ、天馬」
「こんな所で落ち込んでいるなんて、らしくないぞ」
「『なんとかなる』……だろ」

 信助、神童、剣城がそう言葉を続ける。
 俯かせていた顔を上げ、自身を見詰める皆の顔を見渡す。
 仲間を奪われ、自分達のフィールドであるサッカーでボロボロにされて……心が折れてもおかしく無いこの状況でなお、その瞳からは光が消えておらず、天馬は今まで落ち込んでいた自分が酷く情けなく感じた。
 両の頬を強く叩き、前を見据える。

――そうだ……いつまでもウジウジなんてしてられない……
――決めたんだ、大切なモノを守るって……

「皆を元に戻す為にも、こんな所で落ち込んでなんかいられない!」

 そんな、いつもの前向きな天馬が戻ってきた事に皆は安心したように笑みを浮かべた。

「でもよ、これからどうすんだ? そのスキアとか言う奴がどこにいるかも分からないんだぜ?」
「アステリくんの話からするに…………モノクロ世界にいる……」
「いや、場所は分かってても行く手段が無いだろ?」

 そう言葉を交わす水鳥と茜の会話に、天馬達も頭を悩ます。

「それなら大丈夫だよ」

 静まり返る部屋の中、不意に響いたのはアステリの声だった。

「アステリ、何か良い方法があるの?」
「うん。……今日戦ったスキアに影を操ると言う力があった様に、ボクにもキミ達人間には無い特別な力がある。モノクロ世界とこの世界――色彩の世界を行き来する事くらいならボクにも出来るよ」
「本当?」

 「だったら今すぐに」と声を上げた天馬に覆いかぶさるように霧野が静止の言葉を発する。
 窓際で腕を組み立っていた霧野は困ったように眉を下げると、不服そうに自身を見詰める天馬に向かい言葉を続けた。

「敵の領域に乗り込むんだ、焦る気持ちも分かるがまずは俺達の怪我を治す事が先決だろ」
「そーそー。それにさ、先輩達が抜けたせいでメンバーも足りないし」

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