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色を無くしたこの世界で
第一章 ハジマリ
第35話 再戦VSザ・デッド――必殺タクティクスと謎の化身
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ざわざ危険に身を投じる必要は毛頭ありません。アナタ方がこの一件から大人しく手を引いてくださると言うのなら、我等もこれ以上アナタ方と関わる事はしないと約束しましょう」

 手を広げ語るスキアの表情は試合中に垣間見えた、あの嬉々とした笑顔と同じ物だった。
 スキアは彼等がこの一件から手を引くと確信している。

 大人びてはいても彼等はまだ中学生。
 こんな意味の分からない場所に連れてこられ、人とは言い難い異形の存在と戦わされ……
 挙句の果てには自分達のフィールドである"サッカー"で手も足も出せない程に痛み付けられ……
 不安定な彼等の心は再起出来ない程にボロボロになっているはず。
 こうなれば後は簡単。彼等に逃げ場を与えれば良い。
 ここまで力の差を見せれば例えアステリが何を言おうが、その言葉を信じ、命を投げ出す様な馬鹿はいないだろう。

「それに……例えアナタ方が歯向かい続けた所で、その程度の力では我等に潰されるのがオチですよ」

 「今ならまだ引き返せる」「自分達の事は忘れ、普段通りの生活に戻りなさい」……
 心身共に弱り果てた雷門イレブンの心を見透かしたと言わんばかりに、スキアは優しい言葉をかけ続ける。
 彼の発する言葉は拡張していく波紋と共に、雷門イレブンの耳に確かに届き、聞こえていた。
 もちろん、天馬の耳にも。

――"今ならまだ、引き返せる"……

 力が抜け、何かに押しつぶされる様な感覚を味わいながら、天馬は思う。

――ここで俺等が諦めれば……これ以上、誰も傷付かずに済む……?
――痛い思いも……辛い思いもせずに済む……?
――いつもの様に……皆とサッカーがやれる……?

――違う

「ですので、アナタ方は…………」
「違う」
「………………は?」

 突如として聞こえた声に、スキアは言いかけた言葉を飲みこむと声の主の方向へと視線を移した。

「違……う…………違うん、だ……。確かに、辛いのも苦しいのも……皆が傷付いて、倒れていくのも……全部嫌だ……嫌だけど…………ッ」

 天馬はググッと体に力を込めると、顔を上げ、目の前で自分を見下す様に見詰めるスキアに対し射抜くような視線を向け、叫ぶ。

「だけど! だからって、失うと分かっているモノから目を逸らして、逃げる事なんか出来ないよ!!」
「――!!」

 自身を貫く、強く鋭い目がスキアの目に留まる。
 一変の陰りも無い真っすぐな青い瞳の奥底で、スキアが"壊れている"と確信していた心は確かに生きていた。

「ッ、はあああああああああっ!!」

 灰色の空を打ち消さんばかりに天馬は吼えた。
 同時に再度全身に力を込めると、自身を縛る黒いオーラを吹き飛ばすように力の限り腕を振るう。
 瞬間、オーラは弾け
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