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逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 20
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られた。
 「……っ、知るか……っ! お前らがやれって言ったんだろうがっ!」
 吐き捨てるようにそう言うと、ガスガスガス! と、大きな足音を立ててワゴンと共に厨房へと消えていく給仕係。
 「……可愛いわよねぇ、あの子」
 「…………そうですね」
 「「「…………。」」」
 真っ赤に染まった耳朶(みみたぶ)を見逃さなかった大人達は皆、なんとも微笑ましい反応に生温く目を細めた。
 哀れ、クァにゃん。感謝に耐性が無いその素朴感、次期大司教様の餌食になる事請け合いだ……と。
 「さ。皆、護衛のお兄さん達のご厚意に感謝して」
 「「「ありがとーございまーすっ」」」
 「どういたしまして。ゆっくり召し上がれ」
 「頂きます」
 「「「いただきます!」」」
 頭の布とエプロンを外したクァイエットが言葉も無く戻って来て着席すると同時に食事前の挨拶を交わし、各自気になった物から自由に食べ始める住民一同。一口目から飛び出す絶賛の嵐に、騎士達はこっそり「良しっ!」と、拳を強く握り締めた。
 くどくならない程度にバターをたっぷり使ったロールパンは、持てばふわふわ、割ればしっとり、歯切れも良い。
 赤く熟れた小さなトマトを乗せたグリーンサラダには、ゴマをベースに酸味を控えめで作った特製ドレッシングを適量。
 敢えて具を少なめにしてある黄金色に透き通ったスープは、干し肉の出汁とキノコの出汁がしっかりと混ざり合って奥行きを感じさせるコクを生み出し、じっくり煮込んだ数種類の葉物野菜と少量の香辛料が甘さと香ばしさを加えて上品な風味に仕上げている。
 薄く切ってこんがり焼いた燻製肉、茹でた挽肉の腸詰、適度に形を崩して塩胡椒を混ぜ込んだ半熟卵と、一口大に切って蒸したブロッコリー、隠し味程度の辛味を含むトマトソースを一皿に纏めたメインディッシュは、噛めば溢れ出す肉汁の旨味とふんわり広がるハーブの爽やかな香りで食欲を刺激する。
 子供達は言うに及ばず、神父達にとっても滅多に食べられない極上の朝御飯だ。口に運ぶ手はいつに無く滑らかに動き、皿も籠もあっという間に空っぽになってしまった。
 いつもより多い量を平らげた住民達は揃ってお腹を擦り、食事後の挨拶とお礼の言葉を騎士達に掛けて、一人また一人と席を離れていく。
 厨房に食器を下げてから仕事場に足を運ぶ全員が、満ち足りてとても幸せそうな表情をしていた。

 ただ一人、味覚が一つしかない彼を除いて。
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