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逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 20
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が回らなくなっても仕方がないと思います。子供達には昨晩お世話になってしまいましたし、これくらいはお手伝いさせてください」
 当然だが、ベルヘンス卿達は神父達が床に臥せた経緯を知らない。
 神父達も、自分達が(程度はどうであれ)体調不良になるよう仕向けられていた事など知る由も無い。
 倒れた本当の理由がアレなだけあって、騎士達の純粋な厚意が神父達の心に深い罪悪感を刻む。その上、問題だらけの「子供達の手作り料理」を提供していたと聞けば、尚更心苦しさを感じてしまう。
 「あ、ありがとう、ございます」
 神父達はなんだかもう、恐縮するしかなかった。
 「いえ。さあどうぞ、中へ。子供達が待っていますよ」
 笑顔のベルヘンス卿に再度促され、神父達も躊躇いがちに入室する。
 イオーネ以外の住民全員が着席した所で、給仕係の騎士達がそれぞれの食器にスープを注ぎ、その隣にメインディッシュの皿を添えていく。
 貴族的な食事の場であれば順を追って少しずつ出される料理も、孤児院では纏めて一度に出すのが常だ。礼儀作法は勿論大事だが、子供達にとってもっと大事なものは、朝食後の仕事に割く時間。それを理解しているからこそ、騎士達も深夜と早朝の間にこっそり掃除と朝御飯の仕込みをしていたのだ。
 というか、警護の役割を果たせなかった事が地味に口惜しかったと思われる。嬉しそうに瞳をキラキラと輝かせている子供達を見た騎士達の顔が、皆一様にしてやったりと言いたげだ。
 と。
 「ぁあーっ! わるいひとだ!」
 騎士達に交じって給仕をしているクァイエットに気付いたミネットが、椅子を蹴って立ち上がった。
 いきなり大声を出した幼女に、周りがびっくりして二人を見る。
 「っぅ、うっせぇな……! 人を指差すんじゃねぇよ、クソガキ!」
 ビクーッと肩を跳ね上げたクァイエットもまた、長衣姿ではないものの、騎士達と同じく髪を覆う布とエプロンを着用していた。
 ただ、騎士達と違って指先が傷だらけになっている。何処となく顔色も悪い。慣れない作業で相当苦労したらしい。
 「がきじゃない! みねっとはみねっと!」
 「知るかっ! 黙って座ってろバーカ!」
 「みねっと、ばかじゃないもん! ばかっていわれたことないもん!」
 「あーはいはい! そりゃ良かったな!」
 ミネットの席にメインディッシュの皿を置いて、さっさと隣の席へ移るクァイエット。其処にちょこんと座っていたのはキースだ。
 「あっ……あい、……あ……と!」
 やや乱暴な手付きで給仕を終えたクァイエットに声を掛けた途端、彼の目が見開き……眉間に皺が寄る。
 少しの間じっと幼い顔を見つめた後、軽く舌打ちをして、何も言わずに隣の席へ移った。
 「あらあら。せっかくお礼を言ってくれたんだから、どういたしまして、くらい言
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