暗剣忍ばす弑逆の儀 (中)
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り五時間は休んだか。しかし堪らないほどの臭さだ。こんな場所に長居はしたくない。五時間でも充分すぎるほど長居をしてしまった気分だ。
「ご苦労だった、お前も休め」
「……了解」
見張りをしていた兵士を労い、彼を休ませる。
マクドネルを探すも捕虜の数が多すぎる上に、五十人ごとに牢を別けられている為かその姿を確認する事は出来なかった。五十人ごとに別けられた木製の檻はこの収容施設一杯にあり、その数は少なく見積もっても千人は下るまい。矢鱈と広いが、別の区域があればそこにも捕虜がいそうである。
「予め覚悟はしておけ。アレクセイが潜入し、帰還するまでに十日掛かっている。そして俺達が此処に来るまでに更に六日掛かった。既にマクドネルは死んでいる可能性が高い」
言うまでもない事だった。兵士達は――苦楽を共にした家族が既に死んでいる可能性については考えている。認められるかは別として、だが。
しかし、彼らは兵士だ。骨の髄まで兵だった。故に私情を圧し殺して無言で頷いてみせる。
シロウは牢の外を見渡す。ケルト戦士はざっと見ただけで百。《鏖殺しは容易い》。
……? 容易い、か? いかんな、どうにも感覚が馬鹿になっている。日夜頭がおかしくなるほどの撃破報告を受けていたせいだろう、百の戦士を前にしてなんら脅威を感じないのはそのせいだ。
しかし……頭を振る。それよりも、サーヴァントが此処に詰めているのが意外と言えば意外だ。メイヴは己の召喚したサーヴァントに全幅の信頼を置いているかもしれないが、油断や慢心とは無縁の女王である。力には驕る事がある。されどそれで足元を掬われる迂闊さはない。隙となるのは彼女が気づけていない失陥のみ。
見張りとして此処にいるサーヴァントは四騎。些か過剰な配置数だが、捕虜に扮して侵入してくるかもしれないサーヴァントやマスターを、メイヴが警戒しているのだとしたら過剰でもなんでもない。寧ろ用心深さの現れであると言える。
一騎は中華風の鎧を身に纏った武将だ。堂々たる巨躯、漲る武威。ランスロットやアキレウスに見劣りしない重圧がある。冠につけられた特徴的な二本の羽飾りや、手にしている《方天画戟》から、武器を解析するまでもなく真名を察する。
姓を呂、名を布。字を奉先。――呂布だ。
後漢末期、三国志の前の時代に於いて最強の称号をほしいままにした無双の武人。三国志やら後漢末期と聞くと大した事がないような印象を受けるが、彼は西暦一世紀の人物だ。アルトリアが五世紀の人物であると言えば、彼が神代の戦国期に於いて武の頂点に立っていた事の破格さが伝わるだろう。その武勇は三国志の知名度の高さ故か、中華史に於いて覇王項羽に次ぐ猛将であると目されている。
彼は退屈そうにしていた。方天画戟を抱くようにして腕を組んで、壁に背をつ
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