星々は御旗の下に
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嘆かせてやる。ただし必ず勝つ。俺の所に来た事を後悔だけはさせん」
ふ、とジェロニモは笑う。その前に君の方が過労死しそうだがと、やんわりと身を労るように言われた。
シロウは肩を竦め、ジェロニモが東部に向かうのを見送る。そして最後にシロウが握手を求めたのは赤い軍服の女だった。
堅く、硬く、固い。鋼鉄の信念の秘められた瞳をしている。手袋を外して応じた彼女が名乗った。
「俺はエミヤシロウ――」
「もう聞きました。私はフローレンス・ナイチンゲールといいます。ここに患者が多数いると聞きました。案内を」
「……俺の自己紹介をぶった切って、いきなりぶっ込んできたな……」
これには流石のシロウも苦笑い。しかも握手したままである。ナゼか。……ナイチンゲールが手を離してくれないのだ……。
「貴方は病気です」
そしてこれである。ああ、話を聞かない人ね……察してしまえる辺り、対サーヴァント・コミュニケーション検定一級のマスターの面目躍如だ。
クラスはバーサーカーかなと、真名と態度、物言いから推測する。そのままずばりである。分かり易すぎた。この手の人物は何を言っても絶対聞かない。反論や抗弁は無意味、実力行使されて終わりだ。万力に固定されたかのような手を掴み返し、シロウは苔の一念神をも殺す系の対話術を展開した。
極意は『反論せず、反対せず、帆船のように風向きに合わせて誘導する』事。何を隠そうエミヤシロウ、この手の人物の操縦はお手のものだった。相手が女性の場合何故か成功率が上がると専らの評判である。全部アラヤが悪い。
「そうだな。俺は病気だ」
「自覚があるのは大変結構。治療が必要ですね」
きらりと光るクリミアの天使の眼。その硬質な美貌を見据え、シロウは返した。
「治療なら既に施している最中だ」
「? ……貴方は医者なのですか。許可もなく医療に携わるのは看過できる事では――」
「医療資格なら持っている。経験もある。免許は諸事情で携帯できてないが」
半分嘘で半分事実である。何を隠そうこの男、医療者としての資格を保有して――ない。しかし現場の戦場を渡り歩くとどうしても負傷者は目につく、故にその負傷者に応急手当をする内に必要性を感じて勉学に励み、知識だけは豊富に揃えていた。
無機物ほど正確には出来ないが、人体の構造を把握する解析も可能だ。的確に患部を把握し、処置が可能という意味で医者としても食っていける腕はある。経験も多数踏んでいるのだ。
目を丸くするナイチンゲールに、シロウは毅然と告げた。
「俺はお前の時代より先の未来の医療に触れた。偉大な先人であるフローレンス・ナイチンゲールに敬意は払おう。しかしこの病院の主治医兼院長は俺だ、指示には従ってもらう」
「
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