業火の中に
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「あ……マスター、もしかして……」
察したように眼を見開くシータに、男は伝える。
「たった今、部下を出した。きっと見つかる、もうすぐ会えるはずだ」
それは根拠のない言葉だったが、シータは目を大きく見開いて。無意識にミレイを抱き締めると静かに目を伏せた。
「……ありがとう、ございます」
「礼は愛しの旦那と再会出来たらにしてくれ。何なら皆の前で挙式するか? 数千年越しの愛の結実とでも銘打って」
「っ! も、もぉ! マスター! からかわないでください!」
その場面を想像したのか、顔を真っ赤にして怒鳴るシータに男は陽気に手を叩いて笑い声を発する。
愉快だな、などと。希望はあるのだと――絶望に暮れる激動の二年目の到来を前にして、尚も強く笑っていた。
――いつも、旅立つのは自分だった。
それがこうして、送り出す側になる。すると、男は漸く理解する事が出来た。
「送り出すってのは……辛いものなんだな……」
自分は大丈夫などと、慰めにもならない言葉だけを残して。
今、やっと男は実感したのだ。待たせている人達の心境を。
「帰ったら……いや、」
帰っても、もう離れないとは言えない。やる事は沢山ある。やりたい事も山ほどある。だから今度は――
「次の旅は、皆を連れ出してやろうか」
きっと着いてきてくれると、根拠もなく男は思い。どうしてか――無性に望郷の念に駆られていた。
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