業火の中に
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。つい心を折って兵士をやめさせようとした事もある。どれも長年の癖だ。その度にフォローして回ったのも、勝手が違って苦慮したものである。端的に言って、才能のない者を教え導くのにスカサハは向いていなかった。
能力が、ではない。スカサハの性格が。しかしそれでもなんとかしたのは死の実感を手に入れ――宿願を果たした先で、まさかの『未知の体験』の訪れに楽しさを見いだしたからだ。
達成感はある。これまでのノウハウを捨て、零から教え導く中でスカサハもまた不変の英霊である身で師として成長していく事が出来たのだ。これはひどく得難いものである。故にスカサハは万感の思いと共に言うことが出来た。
「お前達には我がマスターの望む全てを叩き込んだ。一人で生き抜けるサバイバル技術と知識、拠点への単独潜入技術、白兵戦の格闘技術、射撃術。ああ、軍行動に於ける戦術も身に付けさせたな。私もマスターに倣い断言してやろう。――お前達は強い。力がではない。技が、でもない。その生きてやろうという心が、時に応じて必要とあらば任務に命を捧げる覚悟がだ。故に祝福してやろう。お前達は――英雄であると」
魔境の智慧と定義される、サーヴァントとしてのスカサハが持つ技能だ。それは彼女が英雄と認めた者にのみ、サーヴァントの技能を与える事が出来る力。
スカサハは『人類愛』の兵士達を。紅い布を身に付け、ダイヤモンドを持つ兵士達全てが英雄であると認めた。故に与える、Bランクの『諜報』の技能を。気配を遮断するのではなく、気配そのものを敵対者だと感じさせない技巧の類いだ。元々の訓練内容に含まれていたものを、サーヴァントの技能の領域に昇華したのである。
「扱い方は直感的に分かるだろう。お前達が他の兵士達の先駆けとなる。この場にいる二百の兵士達こそが仲間内で最も優秀である事の証だ。上手く使えよ?」
スカサハの一時の気の迷いだ。そう簡単に英雄と認めるほど、スカサハの認定する感覚は甘くない。
才有る戦士の師ではなく、才の無い兵士の師としてはじめて鍛えた彼らにだからこそ降って湧いた、所謂初回限定の出血大サービスだ。
兵士達は悟る。自身に掛けられた期待の重さに。下がったスカサハを見て、彼女のマスターは意外そうに苦笑しながら再び前に出る。
「……さて。予期していなかったサプライズだが、それはいい。いい訓辞だった。そうだろう?」
男の問い掛けに、兵士達は頷いた。スカサハの気位の高さは元より、他者に厳しいのと同じぐらい己にも厳しいのだと、彼らも骨身に沁みるほど思い知っていた。
そのスカサハの祝福に、兵士達は感極まっている。涙ぐみそうなほどに。そんな彼らに優しく微笑み、しかし次の瞬間には苛烈な首領の顔となる。
「お前達に任務を与える」
兵士達はその下知に、目を拭って。更に一
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