ゲリラ・オブ・ゲリラ
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徹底された無関心。
それもそのはず。今の彼は――メイヴの下へ強制召喚されたランスロットは、人間を人間とは思えない価値観の改竄がなされている。
彼が人間と認め、本来の在り方を見せるのは、彼の兄弟となるサーヴァントかケルトの兵隊、そしてメイヴと狂王のみである。それ以外は彼にとって回収すべき資源か、駆除すべき害虫でしかないのだ。虫けら如きに見せる騎士道などあるはずもない。
騎士としての在り方はそのままに。
保有する生前の記憶など殆どなく。
あるのはメイヴへの愛情と揺るぎない忠誠のみ。
メイヴ以外を女と認識せず、メイヴを至高と信じる――まさにメイヴにとっての完璧な騎士である。
その剣腕、合理的な戦術思想、内面の騎士道。メイヴが最も気に入った七騎のサーヴァントの内、彼だけが「セイバー」と呼ばれている。それが誇りだった。
人間達を運搬する。目指すは女王メイヴの待つ本拠地。今から帰還するのが待ち遠しい。騎士として王にかしずく喜びには……何故か。胸が張り裂けそうになるほど黒く、暗い絶望を覚えるが。それすらも今は、気が狂いそうなほど甘美な本懐である気がするのだ。
「――待て! 貴様ら……その民を何処に連れていく気だ!?」
ランスロットは片手を上げ、兵達の歩みを止める。彼方より飛来するようにして現れ、眼前に着地して砂塵を舞わせたサーヴァントがいた。
崖の近くの河の畔である。ランスロットは聖剣の柄を掴み、淡々と魔力を充填し始める。問答無用の戦闘体勢にその赤毛の少年は身構える。しかしランスロットは応じた。
駆除すべき害虫。しかし手強いと鋭く見抜いた彼は敢えて口を開いた。本当なら害虫と口舌を交わす義理はないが、この手の虫けらには覚えがあった。敵を前にして問いを投げ、悠長に会話をしようとする姿勢。涙が出そうになるほど懐かしい気もする。しかし彼は合理的に、その会話の間の時間を利用する。
「突然現れたかと思えば、無用な問いを投げ掛けてくるとは。貴公の手にあるその刃は飾りなのか?」
「答えよ! その答え如何によっては、余は貴様を討たねばならん!」
「……ふむ。まあ答えてやってもいいか……」
魔力の充填は完全に終えている。しかし聖剣に魔力を込めているだけで、使用している訳ではない。故に宝具『己が栄光の為でなく』によるステータスの隠蔽、擬態を行えていた。彼が化けているのは己自身、しかして得物は槍であるように見せ、そして隠蔽しているのは限界まで既に充填してある聖剣である。
ランスロットは勿体ぶりつつ、何気ない仕草で堂々と正面から不意を突く。
「我が敬愛せし女王陛下の許に、この資源は運搬している。貴公は手強そうだ。生憎と手加減が出来るほどの器用さはない。戦うとなれば覚悟しても
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