暁 〜小説投稿サイト〜
人理を守れ、エミヤさん!
アウトロー・オブ・アウトロー
[1/7]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話




 自由気儘に、風に吹かれる儘に、奔放に生きる。

 法に属するのではなく心に従う無法者。自らに課した自分なりの正義に寄り添って、誰に理解されずとも信念を押し通す。
 悪逆に牙を剥き、善の営みに背を向け、孤高に流れる一匹狼。それが刺激的(アウトロー)な男達。
 格好つけて一匹狼と銘打っても、そんな呼び名に縛られず、必要に応じて徒党を組むのもよしとする。
 そんなこんなで似た者同士、二人の一匹狼は徒党を組んだ。というよりウマが合ったから一緒にいてもいいかと、殆どノリで決めたようなものである。流れが変われば別れるし、意見を違えればあっさり訣別もするだろう。それでいいじゃないかと嘯いて、進路に悩めばコインが決めるさ(コイントス)。西に東に放浪三昧。とりあえずムカついたのならぶっ殺す、敵は決まって野蛮人。原始時代の勇者達。
 つまるところ、根がお人好しなアウトロー。小難しい理屈なんて要らなくて、腹が立ったら引き金も軽くなる。善意の押し付け、要らないったって押し付けよう。そんな感じで人助け、らしくないなと苦笑い。あれよあれよと祀りあげられ、気づけば辺鄙な村の用心棒になっていた。

「――で、オレとしちゃあ限界感じてんですけどね。コイツら護り切ろうたって無理がある」

 雪が降っている。大地は一面銀世界。真冬の気候は昼であっても過酷なもの。しかしこの地に住み慣れた者にはいつもの事。

 緑衣の弓兵、圧制に立ち向かった無銘の義賊。集落の近辺から、大軍が通れる道全てに罠を仕掛け終えたロビンフッドはうんざりしている。
 そんな彼に少年悪漢王ビリー・ザ・キッド――本名ウィリアム・ヘンリー・マッカーティ・ジュニアは気楽に応じた。尤も、金髪に青い瞳の小柄な少年は、その声音に相応しくない深刻な台詞を吐く。

「うん、それには僕も同意見かな。最初は千、次に五千、更に一万、この間は五万だ。戦略に関しては素人もいいところな僕だけど、戦力の逐次投入が愚策なのは分かる。お陰様でなんとかやってこれていたわけだけど……次は無理だろうね」
「次があったら敵さんは十万になるのかねぇ……あーやだやだ、罠作るにしても元になる材料も底を尽きてんのになぁ。うんざりだぜ、トラップもネタ切れだっつの」
「正直ロビンの破壊工作がなければ、僕達だけで百人近い村人達を守りきれなかったろうね。銃ぶっ放すしか能のない僕じゃあ、とてもじゃないけど真似できないよ」

 言いながら、村の外れで二人は地べたに座り込んでいた。日光を遮る木の蔭は、きゃっきゃと兄弟達と遊ぶ、雪塗れの子供達を眺める特等席。
 平凡な光景だ。特筆するもののない、映画にするとしたらまずカットされるだろう、なんの変哲もない凡庸な景色である。
 しかしそれを守った。あの、命あるものを皆殺しにする悪魔ども
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ