幕間「百人母胎」
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って弱すぎたら話にもならないだろう。普通の兵隊では十万揃えたとしてもあっさり殲滅されてしまいそうだ。
そうして、女王は嗤った。
淫靡に、滾る情欲の炎を燃やしながら――はじめて成功した一人目の戦士に命じる。
「ねぇ、スパルタクス? 私のお願い、聞いてくれるかしら?」
その戦士は青白い躰に数え切れないほどの傷跡を持つ、筋骨隆々とした巨漢であった。
真名をスパルタクス。トラキアの剣闘士にして、第三次奴隷戦争の実質的な指導者である。
彼を知る者なら驚愕するであろう。その眼には理知的な光が点り、彼の物腰は紳士的なそれであったのだから。そればかりか本来有り得ぬ態度で女王であるメイヴに「跪いている」。《絶対の忠誠と愛を抱いている》。《メイヴのためなら隷属をも喜びとする》という、叛逆者スパルタクスという英霊には有り得てはならない性質を持っていた。
「お願いとは言わず、どうか命じていただきたい。母よ。この私が、このスパルタクスが貴女に叛逆するもの悉くを抱擁しよう」
――ローマを相手に、僅か十数名で叛乱を起こし。戦力を瓦解させる事なく奮戦した指揮官。闘技場と戦場で闘い抜いた熟練の剣士。その力と手腕は本物だ。
しかしその、弱者の為に強者に挑み、最後まで叛逆を貫いた気高い魂は――全て、母にして恋人であるメイヴへの愛へと置換されてしまっていた。
彼は剣士・スパルタクス。
その姿に、メイヴはどこまでも純粋に、穢れる事を知らぬ白百合の如く、邪悪に笑む。
「そう? なら命じるわ。スパルタクス――貴方はこの大陸にいる全てのサーヴァントを殺しなさい。もちろん、無駄死にはダメよ? 不利なら撤退してもいいわ。なんなら兵隊もあげる。幾らほしい?」
にんまりと、下された圧制者の命令に、スパルタクスとは掛け離れた紛い物は。しかし本物のスパルタクスである剣士は笑った。
「では、百人の兵を賜りたい。我が恋人に叛逆せし愚か者を、この私が女王に代わって誅戮してくれよう」
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