王の話をされる士郎くん!
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き伸ばして、二週間とする時間の差は君の精神を疲弊させるだろう。だから起きた頃には何もかも忘れていた方がいい。ここで学んだ事だけを持っていって、結実するその時に、全てを思い出すのがベストなのさ」
眠ったはずなのに疲れが取れないなんて、そんなのまるで拷問だろう? 優しいマーリンお兄さんはそんな酷い事はしないからね。起きる頃にはすっきり精神疲労も取り除く。アフターケアも万全さ――などと。このユメの中で、散々に男を打ちのめしている者の台詞とは思えない。
だが男は苦笑するだけ。悪態も吐く、弱音も吐く、激怒して本気で殺そうともする。無理難題の試練を課す畜生、悪魔、外道、屑。罵倒のレパートリーはとっくの昔に品切だ。しかし男はこの人でなしには感謝している。このユメでの出来事は、きっと自分を助けてくれるだろうと確信しているから。
そしてその心に触れられる半夢魔は、だからこそ喜んでいる。
ずっと視ていた、ずっと追っていた。彼の織り成す文様を。不細工なそれを綺麗なものへと変えていく足跡を。最初は単なる興味から、次第に異なる時代の文様にも渡っていって、遂に興味は憧れとなったのだ。
感謝しているのはこちらの方だとマーリンは思っている。
――嘗て己の裡に焼き付けた罪の残照。騎士の中の王、アーサー王のローマ遠征。その出立の日にマーリンは、彼女に告げられたから――
『ありがとう、マーリン。貴方に感謝を。私にとって貴方は偉大な師だった』
――それはなんて、皮肉なのか。
彼女が膝を折った時、導いてやればいいなどと思い上がっていた自分に。遂に膝を折らず、祖国の滅びを食い止める事を諦めなかった少女は、マーリンに……その破滅へ導いた罪深き魔術師に感謝を伝えたのだ。
それははじめて、人でなしであるはずの青年に罪を自覚させた。あの赤い丘。死と断絶、絶望に満ちたカムランで彼女は死ぬ。国は滅び、何もかもが終わる。しかしそこに至って尚、少女は諦めなかったのだ。辿り着いた末路を容認せず、セカイに否を叩きつけた。
代価を支払うならば、奇蹟を掴む機会を与えようという悍ましいセカイの契約の誘いに、王は手を伸ばしてしまったのである。
マーリンは絶望した。自分の仕出かした罪によって――よりにもよって漸く気づけた、愛するに足る尊さを持った心が擂り潰されようとしている。
だが自分にはどうする事もできない。塔に幽閉されている自分には。最後を迎えてなおも諦めないあの王は、いつか必ずその手に聖杯を掴むだろう。そうして契約の通りにあの心は。アルトリアという尊い者は。セカイの歯車に組み込まれてしまう。
だがそれは仕方のない事だ。セカイとの契約とはそういうものなのだから。
しかし彼女は選定の日のやり直しを望むという。自分が王だったから国は滅
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