女難転じて福と成すのが士郎くん!
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、かもしれないが……」
しかし所詮は想像でしかない。実物の聖女なら嫌がる可能性もあるのだ。その高潔さが本物であっても、まともに話した事もない相手に甘える形になるというのは……。
「迷うな。どうあれその剣は、既に戦って勝ち取ったお主のモノでしかない。それをお主の為に使って誰が責められる。お主を批難する資格があるのは聖女のみで、その聖女はお主に敗れたのだぞ。ならば誰にも責める資格はあるまい」
「……」
「……はあ。難儀な性格をしているな? それでこそなのかもしれぬが……今回ばかりは儂の、いやさ私の助言に耳を傾けてくれ。これからマスターとして仰がんとする男の生存率を高める為だ」
「……分かった」
渋々と頷く。
これではまるで、俺が利かん坊みたいじゃないか。
炎の聖剣をスカサハに渡しながら英霊ジャンヌ・ダルクに語り掛ける。俺は貴女を利用する。嫌なら拒んでくれ、と。
しかし――炎の聖剣は、原初のルーンを介してなんの抵抗もなく俺の中に埋め込まれていく。信じられないほど何事もなく、かちり、と歯車が噛み合ったようだった。
まるで……城塞のように重く、固い意思の強さを感じた。幻聴が聴こえる。『貴方ならきっと問題なんかありませんね。微力ながら、力添えさせてもらいます。貴方に神の御加護を』と。
「バカな……」
驚愕する。あの救国の聖女が、俺如きと同化させられるのに、なんの抵抗もしなかった……?
それどころか、積極的に欠損を埋めてくれているようではないか。
スカサハがしたり顔で頷いている。
「――その力を使いこなしてやるのが、《我がマスター》に出来る唯一の報い方だろう。執行した私が責任を持ってマスターを鍛え上げる。否と言うか?」
「……いや。それこそまさかだ。これで尻尾を丸めるようだとジャンヌ・ダルクだけじゃなく、これまで俺を支えてくれた全ての人達に顔向けできなくなる」
ドイツもコイツも、俺に期待してくる。重荷を負わせる。だが望むところだった。
どうせ無茶な旅をするなら、荷物と期待は重ければ重いほどいい。その分、俺の足跡はくっきりと残るはずだ。俺の答えに、数多の英雄を育て上げた女王は不敵な笑みを湛える。
「――彼の世界有数のキング・メーカーとの合作となるのか。腕が鳴るな」
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