暁 〜小説投稿サイト〜
至誠一貫
第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十一 〜英傑、逝く〜
[6/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
そして、引き継ぎをするため、一度并州入りせよ、との事だ。董卓殿も、同行せよ、とある」
「……わかりました」
「でも、黄巾党征伐はどうするの? その命はまだ、生きているのよ? 無断でそれを中断するのはまずいと思うけど」

 賈駆が、当然の指摘をする。

「その事だが。今の朝廷に、我らの動きを監視できる訳がない。まずは、并州入りを優先すべし……との事だ」
「丁原おじ様には、何かお考えがあるようです。今は、その遺言に従いましょう」

 董卓の一言で、方針が決まった。

「では、并州に参りましょう」
「あ、その前に。土方さん、一つお願いがあります」

 真っ直ぐに私を見据える董卓。

「は。何でござるかな?」
「……丁原おじ様の仰る通り、今後は土方さんを、実の父と思って宜しいですか?」
「構いませぬ。拙者のような者で宜しければ」
「では、私の事は、今後そのようにお呼び下さい。真名は、月、です」

 真名を預けるか。
 ……何よりも、相手を信頼する証。

「わかった。では、私の事も名で呼ぶといい」
「はい、歳三さん」
「土方はん。月が許したんやったら、ウチも真名預けるで。霞、や」
「……なら、ボクも預けるわよ。真名は、詠よ」
「二人とも、わかった。確かにその名、預かろう」

 ……ふと、華雄が何やら俯いているが。

「どうした、華雄?」
「……済まん。私には、真名がないのだ。私の故郷では、そのような習慣がなかったのだ」
「ないのなら、気にする事はない」
「……しかし、字すらないのだぞ、私には」

 名を気にするか……わからんではない。

「では、私と月で、良き名を考えておこう」
「ほ、本当か?」

 暗かった表情を一変させ、華雄は私に迫ってきた。

「それでどうだ、月?」
「はい。いいと思います、歳三さん」

 やっと、月に笑顔が戻った。
 まだ、無理をしているのやも知れぬが、今はそれでも笑っている方が良かろう。

「では、呂布」
「……恋でいい。お前の事、何て呼ぶ?」
「私か。好きに呼ぶがいい」
「……わかった。兄ぃ」
「兄か?」
「……ん。親父は、親父。でも、お前はもっと若い……だから、兄ぃ」

 ふふ、この歳で妹、か。
 まぁ、それも一興。

「ねねの事も、真名で呼んで構いませんぞ」
「うむ。改めて、宜しく頼むぞ、二人とも」
「……(コクッ)」
「了解ですぞ!」

 丁原の死は痛ましいが、黄巾党との戦いはまだ半ば。
 それに、任された并州の事もある。
 ……皆と、より一層、力を合わせねばなるまいな。



「ふう……」

 いろいろと、片付けねばならぬ案件が山積だ。
 とりあえずの区切りをつけ、自分の天幕へと戻った。
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ