第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十一 〜英傑、逝く〜
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そして、引き継ぎをするため、一度并州入りせよ、との事だ。董卓殿も、同行せよ、とある」
「……わかりました」
「でも、黄巾党征伐はどうするの? その命はまだ、生きているのよ? 無断でそれを中断するのはまずいと思うけど」
賈駆が、当然の指摘をする。
「その事だが。今の朝廷に、我らの動きを監視できる訳がない。まずは、并州入りを優先すべし……との事だ」
「丁原おじ様には、何かお考えがあるようです。今は、その遺言に従いましょう」
董卓の一言で、方針が決まった。
「では、并州に参りましょう」
「あ、その前に。土方さん、一つお願いがあります」
真っ直ぐに私を見据える董卓。
「は。何でござるかな?」
「……丁原おじ様の仰る通り、今後は土方さんを、実の父と思って宜しいですか?」
「構いませぬ。拙者のような者で宜しければ」
「では、私の事は、今後そのようにお呼び下さい。真名は、月、です」
真名を預けるか。
……何よりも、相手を信頼する証。
「わかった。では、私の事も名で呼ぶといい」
「はい、歳三さん」
「土方はん。月が許したんやったら、ウチも真名預けるで。霞、や」
「……なら、ボクも預けるわよ。真名は、詠よ」
「二人とも、わかった。確かにその名、預かろう」
……ふと、華雄が何やら俯いているが。
「どうした、華雄?」
「……済まん。私には、真名がないのだ。私の故郷では、そのような習慣がなかったのだ」
「ないのなら、気にする事はない」
「……しかし、字すらないのだぞ、私には」
名を気にするか……わからんではない。
「では、私と月で、良き名を考えておこう」
「ほ、本当か?」
暗かった表情を一変させ、華雄は私に迫ってきた。
「それでどうだ、月?」
「はい。いいと思います、歳三さん」
やっと、月に笑顔が戻った。
まだ、無理をしているのやも知れぬが、今はそれでも笑っている方が良かろう。
「では、呂布」
「……恋でいい。お前の事、何て呼ぶ?」
「私か。好きに呼ぶがいい」
「……わかった。兄ぃ」
「兄か?」
「……ん。親父は、親父。でも、お前はもっと若い……だから、兄ぃ」
ふふ、この歳で妹、か。
まぁ、それも一興。
「ねねの事も、真名で呼んで構いませんぞ」
「うむ。改めて、宜しく頼むぞ、二人とも」
「……(コクッ)」
「了解ですぞ!」
丁原の死は痛ましいが、黄巾党との戦いはまだ半ば。
それに、任された并州の事もある。
……皆と、より一層、力を合わせねばなるまいな。
「ふう……」
いろいろと、片付けねばならぬ案件が山積だ。
とりあえずの区切りをつけ、自分の天幕へと戻った。
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