第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十一 〜英傑、逝く〜
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の問題も出てきますねー。愛紗ちゃんや星ちゃん、鈴々ちゃんだけでは手に余ります」
風の指摘に、武の三人が黙り込む。
そう、風の言う通り、これだけの大軍ともなると、指揮を任せるにも少々、荷が重いだろう。
今でさえ、数千の兵をよくまとめていると思うが、更に数倍の兵を預けるとなると、負担も相当なもの。
「董卓殿、丁原殿と相談して参る。皆は、続けてくれ。警戒も怠るな?」
「御意!」
天幕を出たところで、フッと溜息をつく。
皆の前で、悩んだ顔など見せられぬからな。
……私が弱気になれば、皆が不安がる。
再度董卓の本陣へ赴くと、何やら慌ただしい雰囲気となっていた。
「おい、如何した?」
兵の一人を捕まえて、尋ねた。
「はっ。丁原様が、吐血なされたとか」
「丁原殿が?」
「詳しい事は、まだわかりません」
「そうか、わかった」
「では、失礼します!」
だいぶ、加減が悪いようではあったが。
やはり、先の戦で無理が祟ったのであろうか。
ともあれ、見舞わねばならんな。
丁原の天幕に入ると、董卓と呂布の姿があった。
「御免」
「あ、土方さん」
「おお……」
寝台に寝かせられた丁原の顔は、血の気が失せている。
そして、白かった顎髭が、見事にどす黒く染まっていた。
「吐血なされたとか。如何でござる?」
「ふふ、ワシもこれまで、という事じゃろうて」
「丁原おじ様! そのような悲しい事、仰らないで下さい」
董卓の可憐な顔が、歪んでいた。
「……親父。死んだら、ダメ」
「恋よ。これはワシの天寿、逆らう事はかなわぬのじゃ」
「……(フルフル)」
悲しげに、呂布は頭を振る。
「土方殿。側へ、来て下さらんか」
「……は」
屈んで、丁原に顔を近づけた。
「ワシの、最後の頼みじゃ。聞いて下さらんか?」
「……拙者に出来る事であらば、何なりと」
「うむ。……これを、受け取って貰いたいのじゃ」
丁原は、枕元から何かを取り、私へ差し出した。
「これは?」
「并州刺史の印綬じゃよ」
「刺史の……印綬?」
「そうじゃ。無論、正式には陛下にお伺いを立てねばならぬが、今の朝廷に、臨機応変、という事を求めるのは無理というものじゃ」
「……ですが、何故私になのですか? 并州にも、丁原殿の麾下がおりましょう」
「確かに、そうじゃ。だが、殆どは中央より派遣された、賄賂漬けで腐りきった者ども。または、近隣の富豪が、馬鹿息子のために官職を金で買った輩ばかり。とても、民を任せるには値せぬ」
「…………」
「その点、貴殿は知勇共に兼ね備え、優れた麾下をお持ちじゃ。そして何より、人を惹き付けるものがあり、民を想う心もある。
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