第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十一 〜英傑、逝く〜
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「ん……んん?」
「目が覚めたか」
「……はっ? お、お前は誰なのです?」
呂布が連れてきた、白波賊の軍師。
背は鈴々よりも更に小さく、変わった形の帽子を被っている。
「私は、土方歳三。先ほどまで、お前達と戦をしていた」
「戦……? で、では楊奉殿は?」
「どこかへ落ち延びていった。白波賊は、壊滅したぞ」
「うう……。ねねの力が、及びませんでしたか……」
ガックリと項垂れる。
「呂布。この者は、どうやって連れてきた?」
「……敵の中心で、指揮を執っていた。だから、眠らせた」
「そうか。良くやったぞ」
「……ん」
かすかに、頬を染める呂布。
どうやら、褒められて喜んでいるらしい。
「申し訳ござらん、主。懸命に追ったのですが」
「趙雲だけのせいやない。ウチかて、みすみす敵将を逃すやなんて、ホンマ悔しいわ」
「星も張遼も気に病むな。戦は勝ったのだ……最小限の、犠牲でな」
激しい戦ではあったが、幸い、戦死者は全軍合わせて、千余名で済んだ。
……勿論、犠牲など出したくはなかったが、こればかりはやむを得ぬ事だ。
「さて、名を聞かせて貰おうか」
「……ねねは、姓を陳、名を宮。字を公台と言うのです」
また一人、この時代の英傑が登場したようだ。
どうやら、曹操に仕える前に、出会う事になったようだが。
「では、陳宮。何故、賊などの軍師をしていた?」
「……仕方なかったのです。ねねは旅をしていたのですが、お金がなくなって、行き倒れになったのです」
「ふむ。それで?」
「楊奉殿は、ねねを助けて、ご飯を食べさせてくれたのです。その恩に応えただけです」
「だが、その糧は何処から得たものか、それを考えた事はあるのか?」
「ぐ……。で、ですが、元はと言えば、民を苦しめ、そのような反乱を引き起こした、朝廷にこそ罪があるのですぞ!」
「そうだ。朝廷では賄賂が横行し、政治は宦官が壟断しているそうだ。だから、それに対する反乱そのものは、やむを得まい」
陳宮は、勢いを得たか、まくし立てる。
「楊奉殿も、元はと言えば賊ではなかったのですぞ! ただの賊であれば、ねねを助けてくれる事などない筈です」
「だが、それを証明する手立てはあるのか? 所詮、自称に過ぎぬ、と言われればそれまでだ」
「お前などに何が分かるというのです! ねねは、ねねは……」
ボロボロと、涙を流し始めた。
「ご主人様。この者を、どうなさるおつもりですか?」
皆、同じ思いだったのか、愛紗の言葉に頷いている。
「そうだな。董卓殿、丁原殿。黄巾党の将についての処分は、何か指示が出ているのですかな?」
「いえ、特には……」
「名のある将については、討ち取るか捕らえて都に護送せよ
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