グレートプレーンズだよ士郎くん!
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…微笑ましい光景だ。沖田は沖田で、アンドロマケの世話をしてくれていた。
砦内の兵士達は物資の運搬、集積、見張り、休憩を代わる代わる行っている。群衆も思い思いに休んでいた。忙しなく、喧騒に包まれていて。こちらを気にしている者はいない。俺というリーダー、アルジュナという存在感のある英雄にも目がいかないほど忙しいのだ。休むのまた、必須である。他のものに目をやる暇はない。
「……これから伝える事は他言無用だぞ」
「それはどういう……」
「俺のジャックという名は、あそこのミレイという少女がつけてくれたものだ。俺には自分の名に関する記憶がないんだよ」
「記憶がない?」
「ああ。俺は固有結界が使えるんだが、ある事情でそれが使用できなくなっている。代わりにその固有結界を弾丸に込めて、敵にぶつける事で炸裂させているんだ。今のところ二発撃ち、敵サーヴァント一騎と魔神柱一体を撃破しているが……その代わりに記憶が少々欠けてな。そこに自分の名前も入っていたんだよ」
「それは……」
――アルジュナは瞠目した。微かに目を見開き、言葉を探す。
人間には有り得ないその戦果を讃えるべきか否か。それともご自愛くださいと告げるべきか。サーヴァントとしての物言いを模索するも、彼は自重した。
アルジュナは思う、彼は戦士だ。戦士の行いにケチをつける訳にはいかない。それは侮辱である。覚悟して断行した行いは、その者個人の責任である。口出しすべきではないというのが、誇り高きクシャトリヤであるアルジュナの感覚だった。故に頭を下げる。
「……なるほど。よもや偽名を名乗られたのかと邪推した事、謝罪いたします」
「いいさ。俺自身、エミヤシロウという字をどう書くのかも分からんぐらい他人事に感じてるし、名前がなくとも不便はない。ジャックという通り名もある」
「……。……私は貴方の決断と行動に何も言いません。その武勲を讃える事も。しかしマスター、これだけは伝えておきます。この私が加わった以上、マスターがその身を削ってまで力を振るう必要はありません。どうかその負担は私に負わせてください」
揺らぎのない自負と余裕。ずば抜けた安定感。サーヴァントとして完璧な在り方。俺はそれに、若干の違和感を見咎めるも、今それには感謝しかない。
自負があり、余裕があり、完璧である。故にやや張り詰めているように見えるのは気のせいだろうか。己を強く律する求道者のような印象がある。思えば変わり者、ひねくれ者ばかりに縁がある人生だ。コイツも絶対癖が強いんだろうなと、完璧すぎる在り方ゆえに漠然と思う。
「……すまない。それと、感謝する。頼りにさせてもらうぞ、アルジュナ」
「構いません。それがサーヴァントというものです。一応訊ねておきますが、他言無用とはどういうおつもりですか?」
「春……あ
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