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人理を守れ、エミヤさん!
人類愛の黎明
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取るに足らない小娘。クー・フーリンは心底下らない抵抗を眺める。

「――なら、こうするだけの事だ」

 癖を知られている、宝具を、ルーンを、真名を。だがそれがどうしたとばかりに、クー・フーリンは魔槍を構える。
 槍の穂先が地面を睨む、独特な構え。それにジャックは目の色を変えた。それは、それだけは、絶対に撃たせる訳にはいかない宝具。投げるのではなく、刺し貫く権能の手前の力。更に、まだ持っていたのか。彼はルーンの力を解放して自身の体を硬化させていた。
 多少の手傷は許容しよう、代わりに確実に殺すとその冷酷な眼光が告げている。

 沖田の対人魔剣ならその硬化を突破して致命傷を与えられるだろう。しかし放たれたその魔槍は因果を逆転させ、確実にジャックを殺す。微かな驕りも油断もなく、クー・フーリンは確実にジャックを殺そうとしている。
 死ぬ。あれが放たれれば絶対に死ぬ。ジャックは思考の歯車を視界が白熱するほど激しく廻し――対策をまるで思い付けなかった。苦し紛れに沖田に行かせるしかない、せめて相討ちに持っていくしかないと覚悟を固め。

 ――因果逆転の魔槍が放たれる寸前。

 青い、蒼い、矢が飛来した。

「ッッッ!」

 構えを解いたクー・フーリンが即座に後退する。矢避けの加護を持つ凶獣が、僅かの迷いもなしにその矢を回避する事を選んだのだ。
 狙われたのはクー・フーリンである。ジャックはその矢の軌跡をなぞって、その射手を見る。両名の戦闘に割って入ってきたのは。

 黒い肌と、白い衣を纏った美丈夫だった。

「横槍を入れてしまい失礼します」

 玲瓏な声音で、涼やかに告げる。
 炎神の弓を持ったその青年は、淡く微笑んで来援を告げた。

「我が名はアルジュナ。貴方はマスターですね? もしお邪魔でなければ助太刀しましょう」

 カウンター・サーヴァント。授かりの英雄アルジュナが、そこにいた。












 ――誰ぞ知ろう。影の功労者は花の魔術師である。

 彼はずっと剣の如き男の旅路を見守っていた。
 アルトリアの心を救った第五次聖杯戦争、世界を巡り多くの「不幸」を拭って回っていた旅。どれもが見応えがあり、ついには彼はカルデアに辿りついて、歴史から歴史を渡る者となった。
 アルトリアに関する感謝がある、彼の人生の足跡が齎す綺麗な紋様がある……。第五特異点の「全て」を同時に見ていた花の魔術師は、なんとか間に合うように、まだケルトについていなかったアルジュナを誘導して此処に導いたのだ。

「僕は君のファンなんだ。憧れのスターを、ちょっとぐらい贔屓しても罰は当たらないはずだよ」

 そう言って、妖精郷の魔術師は薄く笑む。









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