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マイ「艦これ」「みほ3ん」
EX回:第75話<もう一つの最前線>
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に私は戸惑った。
「だが今までに製造された試作型の艦娘たちは、その末期には、こうなる」
「……」

受け止め切れない気持ちになった私は言葉を失った。だが彼女は続ける。
「最後には精神錯乱するか、この娘のように急に途切れる、どちらかだ。何度も言うが『形』は作れるが心は、まだ難しい」

そのときガタガタと大きな音を立てて声が響く。
「ほら早く」
「……」

ちょっと怖い形相の叢雲と、おとなしい電の二人が動かなくなった吹雪の手と足を持って、おもむろに担架に乗せて運び出すところだ。

「そっち持って!」
「……」
その二人の『吹雪』への雑な扱いには思わず目をそらしたくなった。

私の気分を察したらしいブルネイ司令が言った。
「済まないな美保。もうここでは、これが日常茶飯事。誰もが慣れっこになっていて寿命が尽きた艦娘にも、いちいち配慮しない」

……美保の艦娘たちは軒並み、泣き出していた。耐えきれずに数人が食堂から出て行ったようだ。
(私以上に彼女らのほうが衝撃は大きいだろう)

そう思いながら私はブルネイに言った。
「あまり、見たくない光景だな」
「ああ。だが、ここも戦場なのだ。お互いに感情を押し殺さないと、やり切れない」

そこでブルネイ司令は気を取り直したように言った。
「それでも幸いだったのは吹雪は最期まで『彼女らしかった』ことだな」
「そう……だな」

私は、そう応えるので精一杯だ。

 吹雪が運び出された後、技師が現場メモや機材を整理すると敬礼して食堂から撤収していく。

それに返礼したブルネイ司令は微笑んだ。
「いろいろ見苦しいところを見せて済まなかったな。だが美保メンバーには本当に感謝しているよ」

技術参謀も、やれやれという顔をして寛代の頭を撫でながら私に近寄ってきた。
「落ち込むなよ美保。これも一つの前線だ……よく覚えておけ」
「ハッ」

私は敬礼した。

彼女は意外に優しい笑顔をして私の肩を叩くと、そのまま寛代を連れて食堂の外へ出て行く。

改めて頭の中で彼女の言葉を反復してみる。
(そうか、これも一つの最前線なんだな)

なんとなく納得する気持ちになってきた。理不尽でも心を抑えるのも軍人の務めだ。

 やがて食堂は落ち着きを取り戻してきた。ブルネイ司令は時計を見て言った。
「間だこんな時間だな。まぁ座れよ」
「あぁ」

改めて着席を促されて私も再びテーブルについた。そこへ目を赤くした五月雨が来た。
「あのぉ、お食事……変えましょうか?」

直ぐにブルネイ司令が優しく返事をした。
「大丈夫だ。済まなかったね、五月雨」
「はい」

五月雨は少し明るい表情を見せた。そして一礼をしながら一歩引くと、よろよろと立ち去った。

 
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