要観察対象ジャックさん!
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は……二十六。何者かと戦闘中なのか、激しい魔力光が閃いている。巻き込まれたらいけない。既に気づかれている。
「――進路を変える! 南西に走れェッ!」
銃声を轟かせ、『フィランソロピー』の面々を走らせる。脚をもつれさせながら、我先に走り出す彼らを護衛する。
本当は魔神柱と戦闘を行っているらしいサーヴァントを援護しに行きたかった。だがそれは出来ない。今俺が『フィランソロピー』から離れれば、彼らは心を乱して錯乱してしまいかねない。カーターが抑える事も出来ず、バラバラになって逃げていきそうなのだ。
それに、二十六体の魔神柱と戦闘を行うなど正気ではない。確実に死ぬ。旗の宝具を使った沖田とともに向かっても、逃げる間もなく全滅するだろう。
遠すぎて姿を確認出来なかったが、悪いがあのサーヴァントには魔神柱を引き付けていて貰うしかない。囮として見捨てる。二十六体の魔神柱との戦いを、まがりなりにも戦闘として成立させるだけの力があるらしいのがひどく惜しいが……そんな事を言っている場合ではなかった。
――無数の真紅の槍が見えたようにも思えたのが、ひどく気掛かりだった。
大勢の人が死んだ。
俺の反応が鈍かったせいで。
初手から、惜しまず、二回弾丸の「無限の剣製」を撃てばよかった。なのに、それが出来なかった。
悔やんでも悔やみきれない。なんたる無能か。だが悔やむのも嘆くのも後だ。今は不自然さを確定させるのが先である。
「……弱い。ああ、弱かった」
あの魔神柱は、弱かった。
俺が知るものとは違う。性能は変わりなかったが、どこかがおかしかった。
まるで、意思のない傀儡だったような。
まるで、知性のない機械だったような。
まるで――魔神柱の姿と力だけを再現した、最も厄介な知能を欠いたモノのような。
本来の魔神柱なら、二体もいれば初撃の奇襲で俺は死んでいたか、或いは重傷を負っていたはずだ。
それどころか、群衆は全滅し、兵士達もよくて半減していただろう。
逃げる。とにかく、逃げる。
――後にJ・フィランソロピーと呼ばれる男は、過日の冬木……その出来事を。思い出を。身近な人々に関するもの以外、全て忘れている事へ……ついぞ思い至る事はなかった。
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