衣替えだねジャックさん!
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通の馬なんだから、騎乗スキルが最低でも乗れるのは立証済みだ。それに新撰組には馬術師範もいた。生前に全く心得がなかった訳でもあるまい。
沖田は借りてきた猫のような静かになった。騒がしいのもいいが、そうして黙っているとそれはそれで可憐ではある。俺としてはいつも凛としているアルトリアのレアな表情を見ている気分になれるから、これはこれで大いにアリだ。
向かうは変わらず南東。ある程度南下したら東に進路を変える。昨日俺の記憶にある地図を書き写し、どこに軍事拠点が置かれているのかカーターやエドワルドに訊き、知っている限りの地点を記させた。
置かれている拠点の場所の傾向から割り出せば、後は教科書通りの絞り込みで、どこに拠点があるのかはおおよそ割り出せる。地形や都市の場所などを勘案すれば、此処から250qも歩けば中継できる砦があるはずだ。無くても、或いは潰されていたとしても、更に二つ先までは保つ物資はある。
問題はそれまでにどれほど戦闘を避けられるか。避けられない戦闘があったとして、どれほど人的被害を抑え、物資を捨てなくて済むかだ。理想は戦闘がないこと。あったとしてもサーヴァントがいないこと。
道中にカウンター・サーヴァントを拾えたら最高なんだが。特にレオナルド並みに万能でヘラクレス並みに強ければ文句はない。後はそうだな。属性が悪ではなく、アルトリア並みに真名を知られても特に問題なく、ヘクトール並みに守りが上手くて、燃費がクー・フーリン並みならなおいい。実に謙虚だ。
馬車には子供やお年寄り、怪我人を優先して乗せてある。荷車を押すのは兵士。それを交代しながらやるが、半数は周囲を警戒しながら護衛をする。
気候は穏やかだ。陽射しも暖かい。一昨日から快晴が続いている。しかし……雨が降れば、どうなるか。雨の中を行軍するのは極めて厳しい。兵士や俺はともかく、群衆には体力の消耗が激しくなるだろう。天幕を無数に作り、そこで雨が止むのを待っても、ぬかるんだ地面を歩くのは難儀するだろう。
雨が降っていると視界が悪くなる。足音も聞こえ辛くなる。天幕を組んで雨宿りをしている時に敵に襲われたら最悪だ。
都合よくカウンター・サーヴァントと出会って。都合よくそのサーヴァントの宝具が天候を操れたり、食べ物を量産できたり、理想的な戦力になってくれないかなぁ、と思う。
「……はは」
そんなご都合主義は訪れない。現実をよく知るからこそ、俺は笑う。
信じられないほど何もなく、数日歩いていた。次の中継拠点まで、後一日といったところか。
ああ……まったく。こうも何もないと、却って不吉な予感を抱く。
何せ――そういう時ほど、とんでもない何かが起こるのだと。俺の平坦とは言えない人生経験上、よくよく思い知っていたから。
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