衣替えだねジャックさん!
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暇と言えば暇だが。だからって何してるんだろうなと冷静になると、無性に恥ずかしくなってくるのが人情というもの。いい歳した大人の男が『ぼくのかんがえたサイコーにかっこいい軍服』を作っているなんて……。なんというか、バカみたいだ。
だがまあ、構わないだろう。コイツらのバカに付き合うのも、交流の一種だとでも思えば。そう割りきってしまうと、こうしているのも悪くはない。なんだなんだと集まってくる兵士達を尻目に、俺とエドワルドはここはこうだろ、BOSSここはこうしては? と意見を交わしつつ軍服を作る。鞣した革に金具を取り付けベルトにし、出来上がったものに腕を通してみた。
おお! 兵士達が感嘆の声を上げる。黒地の布を基調として、四角い胸ポケットを左右に二つずつ。スーツを厚地にしたような機能的なもの。上着の上からベルトを締める。黒い革の手袋を両手に嵌め、脹ら脛の半ばまで届く軍靴を履いた。
その上に背中全体を隠し、左半身を覆い隠す面積の広い真紅のマントを羽織る。その裾は膝の辺りまで来ていた。「BOSS、これを!」カーターが興奮しながら鏡を持ってきて俺に見せてくる。
機能性のいい詰襟の黒い軍服。真紅のマント。新たに二、三ほど小さな傷の増えた貌に、無骨な眼帯をつけ。右目は傷んだ金色をしている。……完全に悪の帝国のそれに見えた。帝国の総統と言われても納得されてしまうだろう。思わず顔を顰め、うわぁ、と呻きそうになってしまった。
「な、なんて事だ……」
エドワルドが呻く。我々はもしかしたら、歴史的瞬間に立ち会ったのでは……なんて馬鹿げたことを真剣に口にしていた。鼻を鳴らす。
「バカ言ってないで見張りはちゃんと立ってろ」
「しかしBOSS!」
「しかしもかかしもあるか、さっさとやれ。……えぇいガキかお前ら! 散れ、散れ!」
「マスター!」
興奮冷めやまぬ兵士達にヤケクソ気味に一喝していると、不意に沖田が俺の傍に来ていた。
目を輝かせて俺を見上げてくる沖田に、思わずゲッと口に出してしまう。
「かっこいいです! 大総統! って感じです!」
「おお、大総統ですか。いいですね、それは」
「黙ってろカーター!」
「オキタさん、なんなら貴女のものも造りますか? BOSSとお揃いですよ」
「五月蝿いぞエドワルド。……春。お春! 嬉しそうにするんじゃない! 新撰組なら浅葱色の羽織一択だろうが!」
「でもマスター! この服の上から羽織れば問題ないって沖田さんの中の土方さんが言ってます!」
「その土方を黙らせろ! 本人がそんな事を言うとでも思ってんのか!?」
言いますって絶対! あのひとカッコつけマンですもん! 俺が! 新! 撰! 組だァ! とか言いそうですもん! ラストサムライならぬラストMIBURO的な感じに!
生前親
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