第五章
[8]前話
「それじゃあね」
「うん、三人で行こうね」
「わかったわ」
母は息子にその福岡に行く日を話した、それからは東京駅で何時どうして待ち合わせるのかを決めてだった。
そしてだ、そのうえでだった。
彦太郎は両親と共に実の両親達の墓にそれぞれ参った、その時に墓の中に眠る二人にそれぞれ語り掛けた。
その時にお父さんお母さんとも呼んだ、そしてだった。
その後でだ、彼は両親に言った。
「行こう、お父さんお母さん」
「お前は四人の親がいるか」
「そうだというのね」
「うん、養子ということは知っていてね」
それでとだ、彦太郎は両親に微笑んで述べた。
「実のお父さんお母さんがいたことも。けれどね」
「どうした人か知ってか」
「私達から聞いて」
「うん、実のお父さんはとんでもない人だったよ」
こう言うが語る口調は暖かいものだった。
「許せないけれど最期の最期に人間に戻って」
「お前のことを言った」
「そうだね、そのことは嬉しいし実のお母さんが僕を命がけで護ってくれた」
このこともというのだ。
「嬉しいよ、全く覚えていない人達だけれど」
「それでもか」
「貴方にとってはというのね」
「お父さんとお母さんだよ、そして僕にはね」
今度は今の両親に優しい笑顔で話した。
「今もお父さんとお母さんがいるね」
「そう言ってくれるか」
「私達も貴方の親なのね」
「親が二人だけって決まってるかな」
彦太郎はこうも言った。
「そうでもないね」
「そうだな、ではな」
「これからね」
「戻ろう、明日はお休みだから」
それでとだ、彦太郎は両親に話した。
「実家に久し振りにいていいかな」
「お前の好きにしろ」
父は彼に微笑んで答えた。
「そうしたいならな」
「それじゃあね」
「では福岡に戻りましょう」
母も彼に微笑んで声をかけた。
「そうしましょう」
「うん、じゃあまたここに来るよ」
彦太郎の言葉は今も暖かいものだった。
「そしてお父さんとお母さんにね」
「会いに来るか」
「そうするのね」
「そうするよ、またここに来るよ」
実の両親がいるこの場所にとだ、こう言ってだった。
彦太郎は両親と共に福岡を後にした、三人で新幹線に乗って出発の時にだった。彼は福岡の街を見てお父さんお母さんまた来るよと呟いた、これ以上はないまでに温かい目でそうした。
実の両親 完
2019・1・16
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