第五章
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状況は市にとって悪くなっていた、柴田は羽柴との対立を日増しに深めていったが羽柴の兵は多く戦になっても敗色濃厚だった。
だが柴田はその様なことはおくびにも出さず市に言うのだった。
「今度です、猿と戦をします」
「そうしてですか」
「必ずやあ奴を討ち破り」
そうしてというのだ。
「安土の城も再建してです」
「そこにですか」
「市様をご案内します」
信孝と共にというのだ。
「そうしますので」
「だからですか」
「もう暫くここにおられて下さい」
北ノ庄城、この城にというのだ。
「今は」
「わかりました」
市は自分に笑顔で語る柴田に応えた、今も彼女は主の座にいる。
「それではその様に」
「はい、今暫しお待ち下さい」
「そうさせてもらいます」
こう柴田に答えた、柴田は市と娘達に見送られてそのうえで出陣した。そのうえで賤ケ岳で羽柴と戦ったが。
敗れて北ノ庄に戻った、すると彼は留守を守っていた者達に言った。
「逃げたい者は逃げよ、降りたい者は降れ」
「そうしてですか」
「そのうえで、ですか」
「生きよ、猿は無闇に人を殺める」
だからだというのだ。
「生きたい者は生きよ、しかしな」
「ここを死に場所としたいなら」
「ならばですか」
「ここに残るがいい」
こう言って去りたい者を去らせた、そして彼等を見送るとだった。
最期の宴を開いた、その後でだった。
城を囲む羽柴の軍勢を五層の天守閣から見てだった、市に言った。
「市様、ここはです」
「私もですか」
「はい、城を出てです」
そのうえでというのだ。
「猿めのところに行き」
「命をですね」
「大事にされて下さい」
主家の姫に言うのだった。
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