第五章
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「お参りしてな」
「最後にするのね」
「願掛けの」
「そうする、わしの望みは」
妖怪は二人の主婦にさらに話した。
「巨人の億年連続最下位とな」
「阪神の優勝ね」
「そっちもっていうのね」
「日本一じゃ、妖怪の一生は長いが」
この辺り人間とは全く違う、人間から見れば不老不死と思えるまでにその一生は長いのだ。それも妖怪の特徴の一つだ。
「しかしあと一度だけでいい」
「阪神の日本一を見たい」
「そうなのね」
「そうじゃ、その為にも今から行って来る」
京都、そこにというのだ。
「川をのぼってな」
「そうなのね、じゃあね」
「頑張ってお参りしてね」
「そうしてくる、また機会があれば会おう」
こう言ってだった、妖怪は二人に別れを告げてから。
川に入ってそうして姿を消した、その妖怪を見送ってからだった。
由佳は智子にこんなことを言った。
「ねえ、阪神今年は」
「今年もよね」
「心配よね」
「旦那も言ってるけれど」
「うちの旦那もよ」
つまりお互いの家族もというのだ。
「巨人に負けてばかりで」
「大丈夫かってなってるのよね」
「本当に毎年困るわね」
「思う様に勝てないからね」
「特に夏以降は」
「甲子園もあるし」
地獄のロード、それがはじまるからだ。
「マモノがいてケンタッキーのおじさんもいて」
「そうしたこともあるしね」
「今年も頑張って欲しいのに」
「どうなるかしらね」
「それで妖怪さんにも心配されるとか」
「本当に罪なチームよ」
二人共心から思うことだった。
「どうかしらね」
「巨人にあれだけ弱いとわからないわよね」
「今日の試合は勝ったみたいだけれど」
スマホで確認すればそうだった。
「もっと勝って欲しいわね」
「全くよ」
二人でこんな話をしてから家に帰った、そして次の日二人はそれぞれ家の近所の神社に子供達を連れて買いものの後でお参りして阪神のことをお願いした、その時海和尚のことも思いだし彼の想いも込めて阪神の日本一を願ったのだった。
海和尚 完
2019・4・29
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