綱渡りが好きだねジャックさん!
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に俺は地面にうつ伏せに伏せた。着ているのは真っ黒な野戦服。紅いバンダナは懐に。
四体が倒れる音に、戦士達は瞬時に反応して振り返る。そして仲間が倒されたのを認識するや雄叫びを上げた。敵襲! といった意味の叫びだろう。四方八方から敵が集まってくるのを感じる。ペンテシレイアは丁度今頃に森に入った辺りだろうから、この気配は先に森にいた連中のものだ。
「――」
気配を感じ取るのに集中する。目ではなく、耳を強化していた。足音の数、規模、地面の振動、方角。
気配を探る上で第六感に頼り切れるほど俺は鋭くない。故に五感は限界まで活用する。それで最も敵の警戒網の手薄な方角を掴んだ俺は、匍匐前進で樹木の陰や地面の窪みを辿り、戦士達の死角から死角に移動していく。俺がその場を離れる頃には、戦士達の数は百を超えていた。
――流石に集合速度が速いな。一度見つかれば命はなさそうだ。
周囲にケルト戦士がいない空間を見つける。そこで立ち上がり、保険の為に剣を投影する。宝具ではない無銘のそれだ。それを地面に置いて、土を被せておいた。魔力はいいが、魔術回路の酷使は避けたい。余り負担を負っても良い場ではないのだから。まだまだ先は長い……。
目的は離脱ではなく足止めである。俺がこの場を離れたと判断されても駄目だ。俺は森の中にいると思わせ続けなければ、ペンテシレイアが砦の方へ行ってしまう。それはまだ早い。故に適度にこちらから攻撃をしなければならないのだ。
見つかっては駄目。沖田の不在を知られても駄目。おまけに沖田の弱点を知られても、俺が隠れ過ぎても駄目という四重苦。
……燃えて来たな。どこもかしこも格上ばかり。俺のまともな白兵戦能力はケルト戦士五人分、無茶をすれば十人分だと強がってみよう。そして敵は残り約八千と英霊一騎。いいじゃないか。相手にとって不足なし――皆殺しだ。
一人、また一人。淡々と闇夜に紛れて始末する。構築されつつある陣形に穴を空けながら、無銘の剣を投影し、それを地面に埋めていく。警戒網の手薄な所から一度囲みを突破し、戦士どもの背中を襲い続ける。五十人余りの喉を裂いた辺りで、動きを感じた。
バラけていた戦士達が纏まって動き出したのだ。舌打ちする。ペンテシレイアが再び別動隊の手綱を握ったのだろう。更に難易度を上げてくれた。
だが舐めるなよ。小細工にかけちゃあ天下一品だと自負している。追跡してくる魔性菩薩を振り払う為に磨いた隠密術、こればかりはハサンにも敗けない。それは言い過ぎか。ともあれ、保険を掛ける事を忘れてはならない。罠を仕掛ける時間はなかったが、ならば今から罠を作ればいいだけの事。
五人一組で死角をカバーし合い、密集隊形で戦士らが辺りを探り始めている。今、仕掛けるのは得策ではなかった。一度気配を殺して包囲網から抜け
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