追憶のアンサング
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傷はちゃんと塞がっており、後は体力さえ戻れば戦闘も問題なく行えそうだった。この回復速度はどう考えても自分の治癒魔法を超えている。そしてとあるアクセサリーをジャンゴが装備しているのを見て、サクラはこの驚異的な治癒速度の答えにたどり着いた。
「マキナちゃんのファイヤダイヤモンド……ずっと着けてたんだね、お兄ちゃん」
「大事な仲間の……彼女の遺品だからね。これは絶対に失くしたり手放したりしちゃいけない……そんな代物だ」
「だからだよ。そうやって大切にしてくれてるから、彼女は今も力を貸してくれてるんだ」
「うん、まるで彼女の力が流れ込んでくるようだ。これなら……ぐ!」
「お兄ちゃん! 傷は塞がってもダメージは残ってるんだから無理しないで!」
「大丈夫……これ以上サクラに心配はさせられないよ」
まだ相当痛いはずなのにそれをやせ我慢して微笑むジャンゴ。そして今の『心配はさせられない』というセリフに、サクラは理解した。この人は大切な人を守るためならどんな無茶もまかり通してしまうと。だが、悪い事は立て続けに続くもので、状況は彼等に更なる牙をむく。
ズン……!
「な……この重圧は……!」
ズン……!!
「じょ、冗談でしょ……!」
「地面から漂うこの気配は……まさかこんな場所でだと……!」
ゴゴゴゴゴゴ!!!!
突然、マグニチュード8クラスの地震が発生し、ジャンゴ達はその場に膝をつく。同時に目の前にあった砂丘があっという間にすり鉢状に抉れ、中央に向けて砂が流れ始める。先程の地震を引き起こした存在、この流砂を引き起こした原因を前にして、ジャンゴは目を疑った。そいつは背後で時空の穴が歪み、虚数空間から身を乗り出してきていた。一部に石化が残りつつ、しかし彼女の封印を打ち破って本能のまま現世を破壊しようと、再び目覚めた怪物……。
ギィイィイイィイイィイイィイイッッ!!!!!
「嘘、ヴァナルガンド!? なぜこんな所で虚数空間の穴が開くの!」
「ってかこの状況、蟻地獄そのものじゃねぇか!!」
地面の中に空いた虚数空間に通じる穴、ヴァナルガンドが這い出た場所に砂が流れこむことで図らずも蟻地獄の巣にはまった蟻の状況に陥ったジャンゴとサクラ。足元が急に砂の中に埋もれていったことから、サクラは飛ばなければマズいと直感して飛行魔法を展開する。だが、
「ぐがぁっ!?」
砂の中から伸びてきたヴァナルガンドの腕がサクラの両腕を挟み込むように胴体を捕まえ、グイっと砂の中に引きずり込む。砂漠の柔らかい砂は水に近いレベルで対象を沈めてしまうもので、ヴァナルガンドに引っ張られて一瞬で首元まで埋まったサクラは必死に脱出しようとするが、力は圧倒的にあちらの方が強く、その様子は海難事
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