追憶のアンサング
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欲が原因だった。この膠着状態打開のために世紀末世界の力を借りているのが今だが、そもそもこうなったのは世紀末世界の戦いで銀河意思が試験を出そうと考えたから、というのもある。しかし世紀末世界の人達は力を合わせて生きる意志を示しただけであり、次元世界の人達も同じようにすれば状況の打開はまだ十分可能なのである。しかし……、
「次元世界は哀しい世界だって、お兄ちゃんがニブルヘイムの決戦前に言ってたらしいけど、今の話を聞くと私もそう思えてきたよ。この状況の全ての元凶……“ゼロ”なんてものはどこにもないし、どこにでもあるものだったんだ。皆、自分が正しいと思ったことを信じて頑張って、それが対立や衝突につながって、結局皆で泥沼にはまって、抜け出せなくなって…………グスッ……シュテルちゃん、次元世界は……本当に哀しい世界だね」
「次元世界に限った話ではありません。ヒトという生き物はどこまで行っても、そういうものなのでしょう。ですが、それでも私達は正しいと思ったことを正しいと信じ、未来へ貫き通す。そうやって生きていくしか出来ない、不器用で、哀れで、愚かで、愛しい存在なんです」
「うん……結局のところ、やれることをやっていくだけなんだよね。それで肝心なことを聞きたいんだけど、“接触者”って誰なの?」
「あぁ、それを訊きますか。ついに訊いちゃいますか……」
「……? なんでそんなに溜めるの?」
「良いでしょう、お答えします。実は―――」
シュテルの口から発せられた“接触者”の名前に、サクラは目を丸くして驚き、すぐに苦虫を口いっぱいに入れたような渋面を浮かべる。
「うわぁ……いやホントこれ、うわぁしか言えないよ」
「この気分を例えるなら、大学受験を三浪した浪人生が必死こいて二次試験の問題を解いていたら、実は解答欄が一つずつズレていた時の超やっちまった感ですかね」
「私の場合は……試験の日を間違えて当日じゃなくて次の日に会場に来ちゃって、始める前に終わってたと知らされたぐらい? とにかく普通ならもうやってらんないと諦めるレベルの絶望感だよ。最善の方法だと信じてやったことが、実は取り返しのつかない失敗だったなんて……はぁ……これからどうすればいいのかな?」
「そうですね。今の話は王達にも伝えているのですが、世間に公表すべきことではないでしょう。世界が繰り返されていると知れば、そして輪廻の突破が非常に困難である現状を伝えれば、今やってることは全て無駄になると思い込んで自棄になる人も出てしまうでしょうし、魔力が敵の力であると知れば、下手すれば魔力に関わる存在に対し、魔女狩りが行われるかもしれません。あくまで信用に値する人だけが知るべきでしょう」
「ふんふん」
「かと言ってサクラが今慌てて動くのも止めておくべきです。石
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