幕間の物語「過去の出会い」
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夢を視ているのか。漠然とした心地で、霊的な繋がりを持つ主人の過去を垣間見る。
それは■■が他者に知られたくないと、否、知るべきではないと封をして、戒めている記憶の断片。余程の事がない限り、心を許した間柄の者でも覗けない深層地点。なんの因果か、沖田の意識はそこに滑り込んでしまっていた。
魂の欠損、心象世界の切れ目。それが彼の意識する封に隙間を開けたのだろう。赤い髪に琥珀色の瞳、日本人らしい肌――沖田は数瞬、それが自身のマスターである事を認識できなかった。
顔立ちを注視して、漸く主人なのだと理解する。白髪に褐色の肌、精悍な顔に眼帯をした今の彼しか知らない沖田にとって、少し青さの残る彼は甚だ息苦しそうな印象があった。
未だ見ぬ人理守護の最前線――そこへ至る為の過酷な旅路。記憶の中の沖田の主人は、旅をしているようだった。荷物は最低限で供となる者は一人もいない。
■■■■がまだ単独で、己だけで目につく不幸を払拭しようと足掻いていた時代である。彼は世にも奇妙な、しかし自身と年の頃の変わらぬ青年と出会っていた。
何処かの山中であろう。焚き火をしている■■は、求道する聖職者と語り合っている。――より正確に言えば、一方的に語る青年へうんざりしながら、しかし一応はまともに相対している風であるのだが。
その青年は臥藤門司と名乗った。門司は快活に笑いながら、深く悩み、自らの信ずる神を求めているようで。その宗教観に■■は呆れ、何事かのツッコミを入れたようだった。
おそらくはそのごった煮の宗教観に対するものだろう。曖昧に沖田はそう認識する。しかし門司はそれを受けてカッと目を見開き、勢いよく立ち上がるなり悲嘆を吼えた。
『笑止! お前らしくもない、なんッたる愚問か! 確かに小生は全ての宗教を学び全ての教えを体現してきた。だがしかし! ある時に小生は気づいてしまったのだ。それぞれの教えに矛盾が在り、各々の教えに身勝手な答えがある事を! 矛盾を抱えた教えでは世界を変える事は叶いはしない。神々は人間を救わないのだ。人々の理想によって性格を得た神は、人間の望み通り、人間を悪として扱う。神とはこれ、人間への究極の罰なのだ。これが地上を駆け回り、全ての宗教を学んだ小生の結論である。……恐ろしい結論だった。愚僧は怒りに任せ、完全な神を求めた。人の悪性に塗れていない、原始の神性を探し続けたのだ。その行為そのものが、悪であると理解しながらな』
愚僧を笑うか、■■よ。――門司の思想は沖田の主人の理解を超えているようだった。
しかし真摯に悩むが故に苦しむ者を、理解できないからと笑う■■でもなかった。他ならぬ、由縁の定かならぬ強迫観念に突き動かされている■■である。どこか共感するものもあった。故に彼は告げたの
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