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ある晴れた日に
231部分:オレンジは花の香りその十四
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オレンジは花の香りその十四

「いつも白とかライトブルーとかよ」
「じゃあ今はいてるのは何なんだよ」
「白よ」
 これまた何も考えない返答だった。
「それがどうかしたの?」
「ふうん、成程ね」
 坪本は何も考えずに頷くだけだった。
「白か。わかった」
「何か変だけれど」
「あんた、それ自分で言ったら駄目じゃない」
 呆れた明日夢がここでその静華に突っ込みを入れた。
「折角見せない為に蹴りしなかったのに」
「うわっ、やっちゃった」
 この時でやっと気付いた静華だった。思わずしまった、という顔を見せる。
「これトップシークレットなのに」
「そうよ。女の子の下着はね」
「トップシークレットよね」
 女の世界の常識である。静華は迂闊にもそれを忘れてしまっていたのだった。これは彼女のミスであった。
「参ったわね、これって」
「っていうか自分で言ってんじゃねえかよ」
「あんたが言わせたんじゃない」
 その垂れ目をむっとさせて坪本に言い返す。
「さっき。いい加減怒るわよ」
「急所攻撃だけは勘弁してくれよ」
「それはしないから」
 とは言っても目に殺気が篭ってきているのであまり説得力はなかった。
「それはね。ただし」
「ただし?」
「急所はそこだけじゃないのよ」
 言いながら坪本のズボンの前を見る。やはり急所といえばそこである。
「それ、わかってるんでしょうね」
「げっ、他にもあるのかよ」
「眉間とか脳天とか喉仏とか唇と鼻の間とか」
 一つ一つ指差しながら丁寧に説明をはじめてきた。
「結構あるのよ。急所は」
「秘孔みたいなもんか?それって」
「まあ爆発はしないけれどそこを攻撃されたらやばいのは事実よ」
 今は普段の適当な感じになって坪本に話す。
「下手しなくても死ぬから」
「そうか。人間って急所多いんだな」
「そういうこと。まあそういう場所は狙わないから」
 それはしないというのだった。
「安心しなさい。これ以上変なこと言ったら本当にするからね」
「わかったさ。まあとにかく今夜な」
 こんな話をしながら昼はじめじめした中でもそれなりに楽しくやっていた面々だった。それは夜になっても変わらず恵美の家の喫茶店であるそのライオンズブルーにおいてそれぞれケーキやサンドイッチ、それに未晴の持って来たオレンジを食べながら酒を楽しんでいた。
 青と白、それに木のブラウンの店の中で皆楽しく飲んでいる。しかし窓の外の夜の世界の中から聞こえてくる雨の音には皆あまりいい顔をしていなかった。
「何かずっと雨?今日って」
「そうみたいよ」
 ふとその窓の外に顔を向けた茜に対して奈々瀬が応える。
「今日はね。明日の朝までね」
「やれやれ。傘持ってるからいいし雨の強さ自体はそれ程ではないけれど」

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