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沼地での死闘
第二章

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「別にな」
「そうですか」
「それでな」
 白はさらに言った。
「妹さんの手掛かりやけどな」
「そのことですね」
「そや、それはや」
 まさにというのだ。
「何かあるか」
「妹の部屋に行けば」
 男は白にすぐに答えた。
「そこにです」
「あるんやな」
「残していったものが」
「拙者は狼人でしかも弓兵や」
 白は自分の種族と職業のことを話した。
「鼻がええ、そして他の感性もな」
「鋭いと」
「そやからな」
 それ故にというのだ。
「ある程度見せてくれたらな」
「妹を見付ける手掛かりにですか」
「なるわ、特に鼻や」
 つまり匂いだというのだ。
「それがな」
「手掛かりになりますか」
「そやからな」
「今からですね」
「妹さんのお部屋にな」
「案内させてもらいます」
 男も応えた、そしてだった。
 白は蒲と共に男に彼の家の妹の部屋に案内してもらった、そこで妹の持ちものの匂い具体的には持っていた鉛筆や教科書、ノート、鞄等の匂いを嗅がせてもらった。そうしてそのうえで言うのだった。
「この匂いやな」
「はい、妹は高校生でして」
 男は白に彼女自身のことをさらに話した。
「店の看板娘でもあって」
「学校に通いながらか」
「働き者なんですよ、可愛くて」
「人気もあるんやな」
「饅頭の腕には自信がありますし」
 男は笑ってそちらの話もした。
「それで、です」
「お店も繁盛してるか」
「はい、それで」
「妹さんが戻ってきたら」
「また二人で商売に励みたいです」
「わかった、匂いはわかった」
 妹のそれはとだ、白は答えた。
「ほな後はな」
「狼人のお鼻で、ですか」
「探すわ、狼人の鼻は犬人と並ぶ」
 この世界の人であるあらゆる種族の中でもというのだ。
「ダントツでええ」
「そのお鼻とですね」
「弓兵でも熟練の感覚がある」
 この二つがというのだ。
「そやからな」
「必ずですね」
「妹さん見付けてみせるからな」
 こう言ってだった、二人は男から饅頭も買ってそうしてだった。
 二人でその饅頭を食べてから彼の家を出た、その饅頭は男が言うだけの味があってそれで白は蒲に言った。
「美味かったな、饅頭」
「ほんまにな」
 蒲も食べてわかったうえで応えた。
「よかったわ」
「これやったらな」
「その妹さんが戻ってきたら」
「あの兄ちゃんの言う通りな」
「確かな商売が出来るな」
「そやな、ほなそうなる為にも」
 白は意を決した顔になって言った。
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