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人理を守れ、エミヤさん!
欠ける無限、禁忌の術
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ィンですら、余りに理解を絶する出会いに恐慌を来した。
 なまじ比類なき叡知を持っていたからこそ。「死を越えてくる」という、神霊ですら余程の神格がなければ有り得ざる現象を、なんでもないように容易くおこなって来た存在を前に思考が止まった。知に秀でるばかりに、生き物としての規格を悠々と超える神話的怪物の所業に懼れを懐いた。
 不死の英雄、不死の化け物、そんなものは幾らでも相手にしよう。しかし――「実際に死んだ後に甦って来るモノ」など、いったいどうしろというのだ?

 斯くしてフィンは、クー・フーリンという存在に対して絶対的な心的外傷を負った。生前は只管に逃げ回り、屈辱的な真似をして難を逃れたが、生憎と今はその恐怖の対象こそが主である。逃げようがない。
 故にフィンはあらゆる強制力とは別に、クー・フーリンには逆らえない。アレの視界にも入りたくない。もし彼の近くから離れられるなら幾らでも遠征しようとも。如何なる難敵であっても戦い、これを討とう。返り討ちにされ戦死する事になっても構うものかとすら思っている。クー・フーリンの呪縛から逃れられるなら、死ぬぐらい安い代償だ。

 彼に付き従うディルムッド・オディナもまた、彼と似たような含みがある故に、召喚者ではなく生前の主であるフィンに従う事を選んだ。

 しかしディルムッドは、フィンのようにクー・フーリンを懼れているのではない。ましてや女王メイヴに敬服しているわけでもなかった。
 生前から今現在に至るまで、憧れ続けた伝説の英雄――その変わり果てた姿が見るに堪えなかったのだ。あんな悍ましいものを主人と仰げる騎士ではない。強力な縛りがなければ、彼は主殺しの汚名を受けてでもメイヴや堕ちた大英雄に刃を向けていただろう。人理の為という理由もある。しかし何より、己の憧れた英雄なら、こんな罪もない人々を鏖殺する事など認めはしなかったに違いないのだから。

「む……気づかれたようだな」

 不意にフィンは遥か前方の一団に動きがあるのを見咎めた。五百近い群衆が突如走り出したのだ。
 そして後に残ったのは黒馬に跨がった褐色の肌と、白髪……紅いバンダナと眼帯が特徴的な偉丈夫である。馬上からフィンらを睨み付ける眼光には力があり、それは彼らをして感じるものがある。肌を打つ気迫だ。
 そしてその傍には浅葱色の羽織を纏った、小柄な女剣士がいる。その得物の形状からして、極東のサムライという奴だろうか。サーヴァントである。「可憐な乙女だ。シンセングミ、という奴かな……?」自信なさげにフィンが呟く。英霊の座に在れば知識としては識る事が出来るが、識っていても今一ピンと来ない。悪い意味でマイナーなのだ。
 いずれにしろ、サーヴァントがいるという事は、あの男はマスターなのだろう。フィンの予想通り、自国の戦士らが消息を絶った原因にサー
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